リテール/コマースメディアの「現場」からあらためまして。RMOです。
RMOの主な発信の場を、このサイトに。広告インフラの提供側と事業会社側の経験をもとに、海外ニュースと現場の問いから、リテールメディアを事業にするための論点を考えます。
リテール/コマースメディアの可能性を知り、自分たちの仕事や事業との接点を見つけてもらいたい。広告インフラを提供する側と事業をつくる側、その両方で感じてきた面白さと難しさを、海外の動きや現場の問いとともに書いていきます。
はじめまして。以前から読んでくださっていた方は、お久しぶりです。RMOの廣瀬(ひろせ)です。リテールメディア・コマースメディアの専門メディア「Retail Media Online(RMO)」を運営しています。2023年にSubstackで始め、その後noteに発信の場をお借りしてきたRMOですが、これからはこちらを主な発信の場にしていきます。過去の記事を引き継ぎながら、新しい記事や連載、ニュースレターをここに積み重ねていきます。
発信の場を整え直すにあたって、誰が、何を考えて書いているのか。あらためて自己紹介をさせてください。
インフラを提供する側から、事業をつくる側へ
キャリアの大半をデジタル広告畑で過ごしてきました。直近は米国の広告テクノロジー企業PubMatic(パブマティック)に約10年在籍し、後半はカントリーマネージャーとして日本市場を統括していました。(出典:筆者の回顧、公開略歴)メディアオーナー様の広告マネタイズをサポートするサプライサイドプラットフォーム(SSP)事業は、ブラウザから始まり、アプリ、コネクテッドTV(インターネットにつながるテレビ)と時代の変遷と共に多様なメディアへお取引が拡がり、地上波テレビ各局と広告媒体としてのお取引が始まった時には感慨深いものがありました。10年前には考えもしなかったことです。
また、リテーラー(小売事業者)が持つ生活者に関するデータを広告配信に活かすコマースメディア基盤「Convert」にも携わりました。リテーラーのデータに着目したのはこの頃からです。データについては複雑かつ、法的要素も絡むのでセンシティブになる領域ですが海外では積極的な活用が進んでいる一方、日本でも以前からデジタル広告におけるデータの使い方は模索されています。
当時の仕事で感じていたのは、データをターゲティングに使い、その利用量に単価をかけるマークアップフィー型の収益化では、規模を大きく広げるのが難しいということでした。自社がもつファーストパーティーデータのマネタイズは、なおさらです。
小売のメディア化についても、以前の私は、リテーラーが持つメディアってECってこと?そこに広告枠を設けて広告メディア化したら、せっかくECに集客したユーザーを広告によってまた外に逃してしまうのでは?本業の小売の販売に悪影響がでるのでは?と考えていました。ECと広告によるメディアマネタイズは相性が悪いのではないか。
そのような中、EC大国米国を起点としたリテールメディアの爆発的な広がりが始まり、当時のPubMaticでリテールメディア用のプロダクト「Convert」を日本でもローンチしていこうという流れになり、改めてリテーラーが持つデータがどのような役割をもって、活用されているのかについて向き合う機会となったのです。
なぜ、リテールメディアなのか?
私の根っこにあるのは、わりとシンプルで、このマーケットは日本でも来るぞ!いや、来たら面白い!という感覚です。
海外で新しいサービスが出た。大きな提携が発表された。そうしたニュースにワクワクすることもしばしばですが、それが私たちが住む日本というマーケットで普及し、当たり前になることはそうそうありません。
前職のPubMaticが提供するSSPは、メディア側の広告枠の販売を支える仕組みです。その背景には、データやシステムを使って広告の取引・配信を自動化するプログラマティック広告があります。(出典:IAB UK)そのひとつであるRTB(リアルタイムビディング)は、広告枠をリアルタイムの入札で取引する仕組みです。広告主側のDSP(デマンドサイド・プラットフォーム)とメディア側のSSPが対になる形で、市場がつくられてきました。
当時のPubMaticのコマースメディア基盤「Convert」は、接続していたECへのリテーラーのデータを使った広告配信(オンサイト)、他のメディアへリテーラーのデータを使った広告配信(オフサイト)の両方に対応していました。
リテーラーのデータを使ったオーディエンス配信は、リテールメディア文脈で売ってはいました。ただ、今思えば、リテールメディアの基本の「き」である購買からは少し遠く、数ある広告商品のひとつだったのです。SSPがリテールメディア商品を作り出す難しさを、そこで経験しました。
海外での仕組みや事業モデルを日本に持ち込めば、そのまま同じように広がるとは限りません。
リテーラーのデータを活用した広告サービスについても、データの取り扱い方や広告主の買い方、運用体制など、事業として成立するための条件を確認する必要があります。
一方、新しいサービスが生まれては消えというサイクルが超短期で繰り返されることがインターネットサービス領域の特徴のひとつですが、メガプラットフォームとよばれる(最近はあまりいわれなくなったGAFA的な)一部の大手テック企業が育ってからは、これらの企業に新しい機能、サービスは取り込まれ、特にインターネット広告領域は牛耳られてしまっている感は否めません。
それでも、私がリテールメディアに期待するのには理由があります。
突如この数年で爆発的に伸びてきたリテールメディアは、検索、ソーシャルに続く第三の波(いわゆるサードウェーブ)と呼ばれるほどのインパクトを出しています。(出典:IAB)
先のメガプラットフォーマーが第一波、第二波をサービスや売上の主軸と据えている中、Amazonのように、小売と広告の両方を手がける巨大なプレーヤーもいます。そう、このAmazonこそが、第三波の中心です。すべてのリテーラーがAmazonになれるとは思いません。そのうえで私が面白いと感じるのは、多くのリテーラー自身が、生活者との接点や買い物のデータを生かし、広告事業の主体になれることです。
このあたりが面白いと思いませんか?
日本の小売業の販売額は、2025年に約158兆円に達しています。(出典:経産省)
そのひとつひとつに、商品を知り、比べ、選ぶ生活者の姿があります。リテールメディアはこうした買い物の接点で、商品やサービスの情報を届ける仕組みです。
国内のリテールメディア広告市場は、EC・店舗を含む広告主の年間支出総額で、2029年に1兆円を超えると予測されています。(出典:CARTA調査)
その広がりは、小売に新たな収益をもたらすだけでなく、メーカーが商品の価値を伝える方法や、生活者が商品と出会い、選ぶ体験を変えていく可能性があります。私は、この可能性を、生活者と事業者の双方にとって意味のあるものにしていきたいと考えています。必要な情報が届き、買い物が少し便利になる。その結果として商品やサービスが選ばれ、事業も育つ。そんな関係を、どうつくれるのか。
再開するRMOでは、市場の動きや新しい取り組みを追いながら、その先にある「誰に、どんな価値が生まれるのか」「どうすれば事業として続けられるのか」を、具体的な事例と根拠をもとに考えていきます。
そして、私が大事にしているのは、リテールメディアを広告ビジネスとして捉えることです。リテーラーが持つ顧客接点やデータ、売場を、広告主がお金を払う価値のあるメディアにする。小売事業の横に、もう一つの収益源をつくる。そのためには、広告枠を用意するだけでなく、誰にどのタイミングで接触し、何をオファーし、どんな成果を求め、どう利益を残すかまで考える必要があります。生活者にとっての買いやすさ、広告主にとっての出稿価値、小売にとっての収益が、どうすれば一緒に成り立つのか。ここに、この仕事の難しさと面白さがあると感じています。
電通の推計では、2025年、日本の総広告費は前年を上回り、その半分以上をインターネット広告費が占めるようになりました。(出典:電通「日本の広告費」)同じ2025年のインターネット広告媒体費に限ると、運用型広告が約9割を占めています。(出典:電通ほか「詳細分析」)検索やソーシャルも、大きな存在感を持っています。
インターネット広告が総広告費の半分を超えた今、私が期待しているのは、日本のリテーラー自身が大きな広告マーケットをつくることです。生活者との接点や買い物のデータを持つリテーラーが、広告事業の主体になる。リテール/コマースメディアが日本でも第三の波として成り立つなら、それを実現できるのではないか。これが、私の野望です。

では、日本のリテーラーが広告事業の主体になるには、何が必要なのか。この問いを考えるうえで、インフラを提供する側から見てきた経験が、私の視点の土台になっています。
前職や前々職でも経験しましたが、海外のプロダクトやサービスをそのまま日本のマーケットに当てはめようとしてもうまくハマらないことの方が多くあります。リテールメディアもそうです。日本には日本の商慣習があり、流通構造があり、広告主と小売の関係性、EC化率...etc があります。幸いリテールメディアという概念、広告ビジネスの標準化は実はもうすすんでいます。その標準化を取り入れ、海外の成功事例から何を学び、どこまでローカライズしなければならないか、その違いを把握して初めて実務で使えるプロダクトなりサービスになると思っています。さらにアドテクや、広告ビジネス自体を日本のリテーラーが積極的に取り組む環境をどうつくっていくのか。沢山の人、企業を巻き込んでマーケットを作っていく必要があります。
私は現在、国内の大手公共系事業会社でリテール/コマースメディアの推進に携わっています。仕組みを提供する側から、その仕組みを使って事業をつくる側へ。立場が変わると、同じ技術やサービスでも見え方が変わります。技術的にはできる。でも、それが誰の価値となり、どのように提供するのか。社内では誰が動かし、誰と話せば事が進むのか?事業者にも本社、支社、グループ会社、想像以上のステークホルダーを巻き込み、企業の壁、組織の壁、ヒエラルキーに何度も直面し、これで事業として立ち上がるのか?続けられるのか?日々葛藤しながら進めています。
きれいな構想だけでは見えてこない、こうした問いも含めて書いていきたいと思っています。
ニュースと、仕事の中で生まれる問いから
RMOでは、主に次のテーマを扱います。
- 国内外のリテールメディア・コマースメディア:主要企業の戦略やサービスを追い、日本の事業にとって何を意味するかを考えます。
- 広告事業を動かすための実務:予算の出どころ、広告商品のつくり方、販売、効果測定、運営体制を取り上げます。
- 広告技術と顧客接点の変化:プログラマティック広告、インストアや交通メディア、AIによる検索・購買行動の変化を見ていきます。
- 日本のドメスティック企業でのあるある:日本の企業においてリテールメディア/コマースメディアを推進していく上で、ぶつかる壁やハードル、悩みなどの経験談をできる範囲で紹介します
このように、記事の出発点はニュースだけではありません。仕事をする中で理解が深まったことや、簡単には答えが出なかった問いも、テーマにしていきます。
日本でも、実店舗の接点を広告メディアにする取り組みが進んでいます。(出典:CARTA調査)面白いですよね。では、この新しいメディアに、どんな成果を求めるのか。売上への貢献をどう確かめるのか。日本の現場に引き寄せて考えていきたいと思っています。
媒体や測定方法が違うのに、同じROASなら同じ成果と言えるのか。
その広告予算は、もともと何に使われていたお金だったのか。画面や広告配信の仕組みを導入したあと、継続して売れる商品にするには何が足りないのか。
現場で生まれた疑問を出発点に、公開情報や事例を用いて考える。特定の会社の内部事情を紹介するのではなく、他の現場でも使える論点に整理する。それがRMOでやっていきたいことです。
過去の記事を引き継ぎ、ここから積み重ねる
Substackで書いてきた記事は、このサイトの過去記事に引き継がれています。当時の分析には、その時点の前提があります。いま読むときに見直すべき点は、新しい記事でも取り上げていきます。
これからの詳しい解説や連載、ニュースレターは、このサイトを主な発信の場にします。無料で読める記事を積み重ねていきます。
noteでの発信も続けます。このサイトでの発信が軌道に乗ったら、noteの内容も整え直していく予定です。私の仕事や考え方を知っていただき、相談や新しい出会いにつながる入口にする。その先をもっと読みたい方には、RMOの詳しい記事や連載へ来ていただく。そんな役割分担を考えています。
読んでくださる方へ
小売、広告主、代理店、アドテク企業でリテールメディアに関わる方。これから事業を始めようとしている方。日本でのリテールメディアマーケットは立ち上がったばかりです。先行して試行錯誤を続けているドラッグストア業界、
そして、2026年10月現在、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンという大手コンビニ3社の店舗・顧客接点を軸に、リテールメディアに関する企業連携が進んでいます。(出典:セブン‐イレブン側、ファミリーマート側・データ、同・店頭、ローソン店舗)
これが将来からみた時に日本のリテールメディアの始まりであったということになるのか?
身近なコンビニの接点から、どんな新しい価値をつくれるのか。そこに期待しています。
面白いフェーズに入ってきました。日本独自?のリテール/コマースメディアに期待が止まりません。
2024年には、Kindle本『1時間でわかるリテールメディア』を出版しました。(出典:発売告知)基本的な仕組みをまとめたこの本に対して、RMOでは、その先の論点や変化を掘り下げていきます。
調査や執筆の補助にはAIも活用しますが、何を問い、どう考えるか、何を伝えるかは、私自身の責任で判断します。
新しい記事をメールで受け取りたい方は、無料メール購読をご利用ください。扱ってほしいテーマや、実務で引っかかっている問いも、相談ページからお寄せいただけると嬉しいです。

あらためて、RMOをよろしくお願いいたします。
廣瀬道輝(Michi Hirose)
この記事は、2026年3月18日にnoteで公開した「はじめましてRMOです。noteに引っ越してきました。」をもとに、RMOの発信方針に合わせて改訂したものです。
出典・補足
小売業販売額:約158兆円は、経産省「商業動態統計」の2025年小売業販売額157兆5,080億円を丸めた値です。(経産省「2025年小売業販売を振り返る」)
リテールメディア市場:CARTA HOLDINGS/デジタルインファクトの2026年1月27日公表調査による2029年予測は1兆3,174億円。EC専業・店舗型小売が関与するオンライン広告や店内デジタルサイネージへの広告主の年間支出を対象とし、小売の販売額や経済波及効果を表す数字ではありません。(CARTA調査)
広告費の分母:2025年の総広告費8兆623億円に対し、インターネット広告費4兆459億円は50.2%。運用型広告2兆9,352億円は、制作費・物販系ECプラットフォーム広告費を除くインターネット広告媒体費3兆3,093億円の88.7%に当たります。いずれも調査に基づく推計で、検索とソーシャルは分類軸が異なるため単純合算していません。(電通「日本の広告費」、電通ほか「詳細分析」)
用語:プログラマティック広告はオンライン広告枠の売買を自動化する仕組みで、リアルタイム入札(RTB)に限りません。(IAB UK)
コンビニの企業連携:セブン‐イレブン側は2026年6月11日に新会社設立合意を発表し、同年9月1日の事業開始を予定。ファミリーマート側の設立合意は、データ・ワンが2020年、店頭サイネージ事業が2021年。ローソン店舗の接点を活用するKDDI・三菱商事の合弁会社クインタは2026年9月に事業開始を発表しています。開始時期・出資関係・事業範囲は同一ではありません。(セブン‐イレブン側、データ・ワン、店頭サイネージ、クインタ)
発信と略歴:RMO開始は筆者の活動記録に2023年12月21日と記載。「PubMatic在籍約10年」は本人の回顧による概数で、企業公開の略歴では2014年入社・2019年カントリーマネージャー就任を確認できます。本文の「10年前」は筆者の回想です。(活動記録、筆者の回顧、公開略歴)
書籍・改訂元:Kindle本の発売告知は2024年10月30日。「1時間」は書名の一部です。元note記事は2026年3月18日公開で、本稿はその後の情報を加えた改訂版です。(発売告知、元note記事)