SaaS アドテクベンダーとして、日本の小売業界にどのように貢献できるのか?〜サプライ編〜
米国のリテールメディアと日本のリテールメディア文脈は共通するところもありますが、大きく乖離している部分もあり、ギャップをどう埋めるかというよりは活かせるところを活かす方向性で考えるべきだと思っています。自分の今考える方向性を具体的に考えてみます。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
年始の記事も外部記事の紹介が多めなので、現状というか2024年、今所属している企業でどのように日本マーケット、日本の小売業者に対して米国のSaaS アドテクベンダーがコミュニケーションを取っていくか、どういう切り口でどういうゴールを描いたらいいのか、まだ道中ですが書き置きしたいと思います。
それでは本編スタートです。
まず、私の立ち位置を明確に
私の立ち位置はサプライサイド視点(小売業者視点)です。
私は米国のアドテク企業に所属しており、私達の視点は米国のマーケットに対してプロダクトを開発しSaaS (Software as a Service) で提供しています。
基本的には広告ソリューションの会社で、広告を使ったマネタイズをサポートしています。
広告は立ち位置によって、2つに分けることができます。
広告を使って自社製品(サービス)の売上を上げたい広告主及び代理店などのバイヤー=デマンドサイド
広告在庫を提供して広告で収益化するメディア運営者(パブリッシャー)=サプライサイド
私達の会社はサプライサイドのプロダクトを開発し、メディア運営者を広告の側面からサポートすることを2006年から一貫して続けています。
そんな私達は昨年から小売業界へ参入しました。もちろんサードウエーブだからというのは言うまでもありませんし、米国アドテク企業としても参入すべき領域だと私も思っています。我々が参入する意味合いは上記の立ち位置からも明確で、
第一義的には、
パブリッシャーを広告の側面からサポートする=小売業者を広告の側面からサポートするということに言い換えられます。
コレは背景として小売業者が従来のビジネスである物販/サービス事業に加え、広告ビジネスを融合させて成功したリテールメディアがあるからです。
リテールメディアについては、これまでの記事やこれからの記事でもご紹介しますが、決して新しいものではなく既存のものの組み合わせです。基本的には下記です。
広告フォーマット:ディスプレイ広告(バナーやネイティブ)メイン
広告配信場所:
各小売事業者のECサイト/アプリ(オンサイト広告)
小売事業者のECサイト/アプリ以外への配信(オフサイト広告)
広告商品としての強み:フルファネルで広告配信ができる
オンサイト広告:ECサイト/アプリへ訪れているショッパー(購買検討者)に対して、広告を訴求できる 👉 ミドル〜ローワーファネル
オフサイト広告:興味関心があるユーザーをターゲティングし、広告配信ができる 👉 アッパー〜ミドルファネル
特徴:データドリブン
広告事業者の購買データ(ファーストパーティデータ)を活用する
クローズドループレポーティング(広告インプレッションに対するコンバージョンが計測できる)
こんな感じでしょうか。
注)リテールメディアの範囲は広いので、ここでは私の立ち位置からオンライン広告に絞った言い回しをしていることご了承ください(念のため)。
そうなんです。見ていただければピンとくるかもしれませんが、従来のアドテクを使った配信の延長線上なのです。
これだけで検索広告、ソーシャル広告に次ぐ、サードウェーブになっているので、広告的な側面からは大きなハードルはありません。
特殊なのはスポンサードリスティング広告と呼ばれる、検索連動型のタイプぐらいです。
サプライサイドで必要なのは、
配信面(ECサイト/アプリもしくは外部も配信可能)👉 小売事業者
購買データ(ファーストパーティデータ)👉 小売事業者
それらを繋ぐテクノロジーとインフラ 👉 当社
です。
🛠ギャップ
こう書いていきますとRMNの構築も簡単そうみ見えますが、米国と日本マーケットでのギャップは大きいです。
簡単には
RMNとして成功できる規模にない(いきなり結論めいてしまいました)
購買データを持っている小売業者が限られる(あっても広告に使うコンセンサスが消費者ととれていない)
RMNを推進できるチームがない
👽ハードル
RMNとして成功できる規模に定義はないですが、RMNが従来の小売りビジネス+広告ビジネス定義すると、広告ビジネスには媒体力(メディアパワー)が必用です。
媒体力は、その名の通り広告媒体としての収益力に言い換えられます。
広告売上の基本的な考えは、
ディスプレイ広告売上=広告の表示回数 x 広告単価
です。
そうです、サイトやアプリの規模を増やす(もっというと広告在庫を増やす)か、広告単価を上げるの2つの係数で成り立ちます。
ただ、プロダクトリスティングはCPC(クリック課金)なのでまた別の考えとなりますが、こちらは
プロダクトリスティング広告売上=利用ユーザー数 x 広告の入札密度(単価)
が収益力のキーとなります。
いずれにしても集客力が必要で、規模感で該当する日本企業は楽天(敬称略)を始めとしたいくつかと考えられます。彼らは既に何年もかけて内製外製を試みて今に至っています。もちろん当社のプロダクトを活用頂く機会はあると考えていますのでアプローチしていきます。
ただ、私個人としては日本の大規模EC以外を広告マネタイズでどう貢献できるかを思考してみたいので、規模の問題は各EC単独でユーザーを増やす、もしくは広告在庫を増やすことは正ではない気がしているので、連合を組む方向性を思考すべきかなと思っており、それをサポートできるプロダクトが必用だと考えています。
以前、とあるイベントで西のリテール企業の方とお話した時、こんなことを伺いました。
リテールメディアを認識している、
2024年問題を始め、危機感がある
リテールメディアが活路になる可能性を模索したい
自社だけでどうこうできるものではない
他社と組んで、会員の相互集客やIDなどの共有、結合含め検討したい
誰もが知っている小売企業の関連会社の社長でした。
どうしても、小売業者がメディア化するということ自体にハードルがあり、それをさらに広告でマネタイズするということが概念及び実現する体制を構築するのに大きな決断と時間が必要そうです。
このあたりを踏まえ、単なるプロダクト提供ではなくガッチリハマる事業化(売上比率は本業の物販が多く、利益率は広告ビジネスが引っ張る)を目指して協業したいです。
また、別の方向性として、
自社が小売業とあまり認識していない、もしくはRMNとなれることを認識していない企業(多くはマーケットプレイス)に対してもプロダクトリスティングやオフサイト広告を展開できる余地があると考えているので、いくつか既に話を始めていますが、キャッチアップして活路を見出したいです。
〆まとめ
書き出しましたら、立ち位置(サプライ)だけで文量が多くなってしまったので、数回に分割することにしました。こう書いてみると私のキャリアの多くがサプライサイドであることも大きい要因で、視点が小売業者が広告を使ってどのようにリテールメディアとしての成功を収めることができるかというのが大テーマになっているような気がします。ただこれには多くのギャップ、ハードルが既に見えているのでこのあたりを数回に分けて、書いていきたいと思います。
🖊編集後記
当社は米国企業ですが、当社CEOがオフィスの活用を推奨しています。パンデミックでオフィスを使わずとも(元々PCひとつでシゴトができる環境ではありましたが)、シゴトが回ることを証明し、特にビデオコールでの会議が当たり前となりました。一方で当社CEOの懸念は社員同士のコミュニケーションの希薄化とロイヤリティーの低下に伴う、会社のボトムダウンです。
結果、当社はハイブリッドは維持しつつ、週3日のオフィスワーク(ウチ1日が全員出社)をしています。フルリモートも良いですが、個人的にはこの考えに賛成でオフィスの有効活用は有用だと感じています。
それではまた次回。
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