Marriott Media Networkの停滞に学ぶこと
2022年5月にラグジュアリーブランドホテルグループのMarriottがメディアネットワークをローンチしました。しかし2024の今、コトはうまく進んでいないようです。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
先日、リテールメディアネットワーク(RMN)の横展開ができる 3 業種について書きましたが、そのなかで旅行業界の事例に上げたMarriottのMarriott Media Networkのその後と現状について勉強になるのでここで触れてみたいと思います。
📣この記事でわかること
Marriott Media Networkとは
今後、Marriott Media Networkはどうしていくのか?
Big Thinking
それでは本編スタートです。
Marriott Media Networkとは
改めて、Marriott Media Networkの概要と目的に触れておきます。
上記の図にあるように、Marriott BONVOYはLuxuryからLonger Staysと滞在の目的に合わせて 34 もの宿泊施設を擁しています。そして、彼らの持つスペックと期待されていた収益予想は下記です。
このブランドは、ホテル業界の平均純利益のほぼ 2 倍である 29% 以上の純利益を広告に活用することができ、莫大な株主価値をもたらし、さらにYahoo との提携により、広告販売コストも低くなるという期待がありました。しかし、そうはうまくいきませんでした。
理由は大きく 3 つです。
Marriotto側が他のRMNの様に見られたくない(ハイブランドであるが故に、ニュアンス的には広告でガツガツしてると見られたくない?)。
広告主がMarriott Media Networkにコンテンツを作ることができ、Marriott BONVOYの消費者に対して価値のあるコンテンツを通してダイレクトに訴求することができることを志向しており、RMNではなくパブリッシャーというスタンスを模索していた。
エクスクルーシブパートナーのYahooが広告事業の不振からSSP事業を撤退しDSP事業に専念してしまった。
結果、動きがスローで進んでいない状態です。
今後、Marriott Media Networkはどうしていくのか?
まず、インフラはYahooからGoogleへのパートナーシップに移行しているようです。
そして、Marriottにとって Low Hanging Fruit(手っ取り早く収益を得やすい)なのは、Googleもしくはそれに競合するディスプレイネットワークを採用し、オウンドメディアであるbrand.comやホテルのTV画面に表示させることです。
ただ、これは大きく儲かる手段ではありません。
理由は当然CPMは安くなり(1 ~2 ドル?)、かつこの手法は膨大なインベントリがあってこそです。いくら1億6400万ユーザーを抱える大手のホテルグループであってもインベントリボリュームは限られており、グループの会員データのターゲティングをせずにオープンオークションで買付させるのは愚策でしょう。
また、広告主観点では旅行者、またはこれから旅行しようとしている旅行者にリーチするために、コストを払うことに前向きな広告主はどのようなタイプの広告主か想像してみてください。おそらく最も可能性が高いのは他の旅行系ブランドです。しかし、オンライン旅行代理店やその他のホテルグループに Marriott が自社グループのゲストやロイヤルティプログラム会員に対してエクスペディアやヒルトンの広告を掲載することは難しいでしょう。
広告主やクリエイティブの精査も大事になります。たとえば、ホテルのロビーのスクリーンに競合他社の広告や政治的な広告が表示されることを望まない広告主もいるでしょうし、一般的に家族連れをターゲットとしているホテルブランドであれば、きわどい広告を見せたくないでしょう。このような精査により、利用可能な広告在庫がさらに絞り込まれる可能性があります。
Big Thinking
Low Hanging Fruitではない方法ですが、大きく儲かる可能性のある手法としては、大きく広告事業を展開することです。
Marriott が広告営業チームを構築しマーケットインして「我々には優れた自社グループデータを備えたこの素晴らしい資産があり、それを例えばCPMあたり30ドルで販売します」と言うことができます。それでも運用コストなどをペイするのに十分な広告収入を生み出すには、月に数億のページビューが必要になるでしょう。
Marriott BONVOYというグループの資産を考えると、The Ritz-Carlton、JW Marriott、STREGIS などの最も有名なラグジュアリーブランドに注力することも可能です。いわゆる富裕層の顧客にリーチしたいと考えている時計メーカーやオートクチュールメーカーなどの広告主を獲得するのです。
ただこれには、優秀で熟練した営業担当者を雇わなければならなくなるでしょうし、こうした営業マン、営業チームへの投資は決して安くはなく、ホテルの顧客が広告に興味を示し、反応しているという成果、主張をしていかなくてはなりません。
なによりMarriott BONVOYはホテルのプロですが、広告ビジネスのプロではないので自社で内製もしくはアウトソースを活用することを視野に、戦略を組まなくてはならないのはリテールメディアとやはり同じように思えます。
〆まとめ
いかがでしたか?
グローバルでも最大手のひとつに数えられる Marriott BONVOY グループのコマースメディアのチャレンジを見てきました。エクスクルーシブパートナーであったYahooのビジネス転換という不幸があったものの、それがなくてもMarriott BONVOY側の広告ビジネスへの確固たる意思が弱かったように見えます。やはり元来のラグジュアリーブランドホテルを擁していると、軽々しく会員データでマネタイズするという行為、そして実際に行動に移すことが容易でなかった。さらにコンテンツビジネスも並行して行おうとしていたことで、広告主、ホテル側、ユーザーへのコンテンツと広告の見せ方など決断が下だせなかったようにも見えるのでやはり小売業界のみならず、本業に加えて経験したことのない未知のビジネス(広告)を取り込んで、立ち上げることへの産みの苦しみがあり、それをどう乗り越えるかなのだな、と感じました。それには組織のトップ自ら決める、もしくは任せられたリーダーにある程度の決裁権を与えないと動かないと思います。
🖊編集後記
今この記事を書いているのは2/14のバレンタインデーなのですが、バレンタインデーもだいぶ落ち着いたというか、風物詩的な盛り上がりも薄くなったように思います。自分の歳もあると思いますが。やはり学生の時が 1 番気にしましたし、会社でもらったりするようなこともありましたが、今はWork From Homeも当たり前になり私のようにオフィスに行っていない方も多いのではないでしょうか。なにより義理チョコとか、もはやないですよね。
それではまた次回。
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