リテールメディア 101
リテールメディアはブランドのマーケティングミックスに急速に不可欠な部分になりつつあります。一方でリテールメディアの世界は複雑で、業界用語や新しい概念がたくさんあります。このリテールメディア 101 では、基礎を詳しく説明して、すぐに理解できるようにします。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
以前もお届けしていますが、お陰様でフォロー・サブスクしてくださる方々が増えてきたので、改めてという意味でリテールメディア 1011をお届けします。101というのは入門編というような意味合いで、新しいことを学ぶ際の入口としての名称です。
リテールメディアはマーケティングミックスに急速に不可欠なツールになりつつあり、この 10 年で最大の広告トレンドとなる可能性があります。小売業者がより多くの購買データを収集し、高度なデジタルプラットフォームを構築して広告の所有権を持ち、それに伴い店内での商品提供を強化し、CTVなどの新しいメディアのパートナーシップをテストしたり、リテールメディア戦略を策定、実施する為のフライホイールが洗練され、考えられるあらゆる場所に広告を掲載し広告支出は爆発的に増えています。
📣この記事でわかること
リテールメディアとは?
リテールメディアが持つ機会
小売業者にとっての機会
広告主にとっての機会リテールメディアは広告主をどのように支援するのか?
リテールメディアの広告フォーマット
リテールメディアのプランニング
リテールメディアに関わる主なプレイヤー
リテールメディアの測定
それでは本編スタートです。
リテールメディアとは?
リテールメディアとは、第一義的に店舗とオンラインの両方で小売業者が所有するアセット上の有料広告を指します。第二義的には、その小売業者のアセット以外に広告を配信することでメディアチャネルとして機能するデジタル広告を指します。これには小売業者のファーストパーティーの購買データを活用したメディアコンテンツも含まれます。例えば、
小売店舗のウェブサイトやアプリ上のデジタル広告
POPや看板、ディスプレイなどの物理的な店内広告
小売業者ブランドのクレジットカードやショッピング バッグへの広告
小売業者サイトやアプリ上のスポンサー付き検索広告
小売業者が運営するもしくは、広告配信可能なCTV チャンネルとラジオ、メディアコンテンツ
店舗内音声放送
その小売業者以外(サードパーティー)のメディアへの広告配信
世界のリテールメディアへの支出は、今年 2024年に 140 億ドル ( 150 円換算で 21 兆円) 内、米国は59.9 億ドル ( 150 円換算で 9兆円) に達すると想定されています。Walmart、Target、Kroger、そしてAmazon などの大手小売業者はすべて、小売メーカーやブランドがメディアを購入できるリテールメディアネットワーク RMN) を持っています。
ここで注目しておきたいことは、
米国の2024年のリテールメディアへの総広告支出 59.9億ドルの内、実店舗への広告支出はわずか 6.2% の 3億7,000万ドルであるということであること
リテールメディアへの広告支出が米国の総メディア広告費の 1/5 以上である21.8%を占めることになること2
日本ではどうしてもオンサイト(小売業のオウンドメディアへの広告配信)広告在庫が少ないため、実店舗への集客とDXが発展しています。米国とのトレンドの違いがハッキリとでるところです。また先日発表された電通日本の広告費から日本の EC 広告支出はまだ 3% です (海外のそれとは集計定義が違うと思うのですが)。こちらについてはよろしければ以前の記事をご参照ください。
リテールメディアが持つ機会
小売業者にとっての機会
小売業者にとってのリテールメディアは第二エンジンともいうべき新たな収益源であり、ショッピングデータ (購買データ) とオンライン/モバイルを活用した収益化するためのプラットフォームであり、手段です。
主なリテールメディアの機会には次のようなものがあります。
オウンドメディアの Web サイトやアプリで広告枠やスポンサーシップを販売することで、広告収入の増加を生み出す(オンサイト配信)
広告主が主要な消費者セグメントをターゲットにしてリーチできるようにすることで、自社の買い物客データを収益化する(オンサイト・オフサイト配信)
広告表示を販売データに結び付けることで、ブランドの測定とアトリビューションを提供する
よりパーソナライズされた関連性の高い広告エクスペリエンスを通じて、買い物客とのロイヤルティとエンゲージメントを構築する
広告主に確実な知名度を提供することで、プロモーション割引を相殺し、製品価格を高く維持する
広告主にとっての機会
広告主にとって、リテールメディアは他のデジタルメディアチャネルと比較して、より優れたターゲティング、最適化、測定を可能にします。
主なリテールメディアの機会には次のようなものがあります。
小売業者の購買データに基づいて特定の製品/カテゴリの買い物客をターゲットにする
オフライン販売データに関連付けられたクローズドループ測定による広告キャンペーンの最適化
購入意向が最も強い小売業者所有のオウンドメディア (EC やメディアコンテンツ) での掲載枠の獲得
小売サイト/アプリを積極的に閲覧および検索している消費者に製品を宣伝する
インフルエンサーマーケティングから購入準備ができている視聴者への売上向上と ROI の達成
デジタル商品棚での製品の可視性を確保し、スポンサーシップを通じてプレミアムな配置を確保します
小売業者のプラットフォームに広告費を投資して小売業者とのパートナーシップを構築する (ジョイントビジネスプラン・JBPなど)
リテールメディアはどのように広告主を支援するのか?
リテールメディアは、広告主にとって購入の瞬間に最も近いところにいます。買い物客は小売店を訪れた時点ですでに購買マインドを持っているため、リテールメディアは即座にコンバージョンを喚起することができます。
小売業者はまた、取引、CRMデータ、ロイヤルティプログラムなどを通じて、消費者に関する貴重なインサイトを持っています。このような購買データにより、小売企業は広告主が優良顧客を特定し、大規模なターゲティングを行えるよう支援することができます。
デジタル棚を獲得するための競争が激化する中、リテールメディアは、広告主がオンラインで商品を発見しやすくするためのより良いコントロールを提供します。検索連動型広告やスポンサードプロダクト広告により、ブランドは積極的に商品を見ている買い物客の目に留まるようになります。
広告主が実施するリテールメディア上でのキャンペーンに対して、クローズドループ測定によるパフォーマンス結果をレポートし、キャンペーンの最適化を提供できるようになります。
リテールメディアの広告フォーマット
オンサイト広告配信:
サイト内ディスプレイ広告は、リテールメディアの主要フォーマットです。
これには、小売業者のウェブサイトやアプリ上のバナー広告、テイクオーバー広告、動画広告が含まれます。ディスプレイ広告は、リターゲティングのような手法を使って、閲覧行動に基づいて買い物客をターゲティングします。
検索連動型広告 (SPL)は、小売企業サイトの検索結果の上位に広告主の商品を表示します。検索結果ページの上位に広告表示されるため、見つけられやすく販売数に直結する効果があります。買い物客が「洗剤」のような一般的な用語を検索した場合、広告主は特定の商品を表示するために料金を支払って広告を出します。
スポンサードプロダクト広告は、カテゴリーページや検索ページでのブランド商品の認知度を高める効果があります。広告主は基本的にデジタル棚への優先的な掲載に対して対価を支払います。
店舗内広告には、ディスプレイ、デモ、エンドキャップ3などの伝統的なフォーマットに加え、スマートカートやビーコンなどの新たなデジタルオプションも含まれます。
オフサイト広告配信:
ターゲティングするために小売業者の購買データを利用し、オープンウェブやソーシャルメディア、CTVなど小売企業が所有するアセットの枠を超えて広告展開されます。米国のマーケターがリテールメディアで予算を割き始めているスペースです。
リテールメディアのプランニング
リテールメディアは、オンラインとオフライン両方のタッチポイントを考慮したオムニチャネルプランニングアプローチが必要です。キャンペーンはプラットフォームを横断して認知、検討、コンバージョンを促進するバランスの取れたメディアミックスであるべきです。下記 4 つのステップがあります。
キャンペーンの目的、KPI設定
オーディエンスターゲティングの設定
利用する広告フォーマットの検討、実施
測定、最適化
プランニングのプロセスは、キャンペーンの目的とKPIを特定することから始まります。リテールメディアの場合、典型的な目標は、売上アップ、広告費用対効果(ROAS/iROAS)、シェアの拡大、インクリメンタリティなどです。成功のための明確なベンチマークを前もって設定します。マーケターが使うと考えているKPIはコチラの記事にもまとまっています。
次にオーディエンスターゲティングです。リテールメディアでは、広告主は既存顧客にリーチするだけでなく、新規の価値の高い買い物客を見つけることができます。小売店のロイヤリティデータ、オウンドデータ、サードパーティデータを活用し、カスタムセグメントを構築します。
オーディエンスが定義されれば、広告フォーマットを選定します。そして広告主は特定のリテールメディア戦術全体に予算を割り当て、始めることができます。スポンサードプロダクトだけでなく、季節限定のアクティベーションやキャンペーンなど、常時稼働する基本的なフォーマットの両方を使用します。
最後のステップは、最適化と測定です。クリック数、サイト訪問数、売上などの指標を用いて、パフォーマンスを毎日追跡します。ターゲティング、クリエイティブ、入札レベルを調整して結果を改善します。
リテールメディアに関わる主なプレイヤー
リテールメディアでは広告主側は、マーケティングとセールスチームの両方が重要な役割を果たします。
マーケティング担当者は、認知度や測定など、ファネル上部の目標を扱い、
セールスチームは小売業者との関係を保ち、目標到達プロセスの下位の KPI を設定します。
代理店は、オムニチャネルリテールメディア戦略の策定を支援します。 また、キャンペーンの実行と最適化を行い、何が効果的かについて外部の視点を提供します。 米国の多くの代理店には社内にリテールメディアの専門家を抱えています。
TradeDesk のような DSP プラットフォームは、多くの小売業者にまたがるリテールメディアをプログラマティックに管理、買付するための技術機能を提供します。 DMP は、ターゲティングのためにオーディエンス データを整理するのに役立ちます。またこれらを一つのプラットフォームで提供する事業者もいます(PubMatic, Criteoなど)。
小売業者が明らかにリテールメディアを牽引していることは明らかです。 彼らは貴重な購買データの資産を磨き、広告商品を開発し、パフォーマンス測定するプラットフォームを提供しています。Amazon Advertisingは巨人ですが、 Walmart Connect のようなリテールメディアネットワーク (RMN) が業界を切り開いています。
リテールメディアの測定
リテールメディアにはクローズドループ測定 (CLM) というキラーウェポンがあります。この測定方法を活用しキャンペーンを運用することは、パフォーマンスを証明するために非常に重要です 。 主要な指標には次のものが含まれます。
ROAS (広告費用対効果) : 売上 ÷ メディアコスト (媒体費)
インクリメンタリティ (売上増加率) : 基準値より高い売上増加率、広告のインパクトを把握
マルチタッチアトリビューション : 各広告がコンバージョンにどのように寄与したか
店舗内販売 : オンラインリテールメディアのハロー効果を測定するためにも重要
〆まとめ
いかがでしたか?
今回は 101 という形で、リテールメディアとは?から始まり、リテールメディア持つ機会、小売業者・広告主にとってどういうメリットがあるのか?それをサポートするマーケターが行っているプランニング、広告フォーマットの種類、関わるプレイヤー、そして測定まで全体的にわたって触れてきました。
今の消費者はオムニチャネルを好みます(複数のチャネルから購買に至る為)。そしてリテールメディアはマーケティングとセールスチームが融合する必要があります。 なぜなら広告主、代理店、プラットフォーム、小売業者が一体となって、今の消費者と関わっていかなければならないからです。
これを日本で行なうことは大きなチャレンジかもしれません。でもリテールメディアのベストプラクティスを作り上げることで、広告主はこの成長機会をうまく乗り切ることができると思います。
次回は、米国でのリテールメディアのベストプラクティスについて触れていきます。
🖊編集後記
欧米はビジネス関係の投稿やコミュニケーション、もちろん転職関係含め Linkedin なんですけど、英語ベースであることもあって日本では未だ使っている人は外資系関係の方を中心に一握りな印象です。そんな環境のため、シゴト関係の投稿とかをする先が Facebook になりがちで、というかそこしかない感じですよね。消去法で。インスタじゃないし。Twitter (じゃなくてXか) は流れちゃうし、最近ムズくなってるし、そんなコッタで RMO のことを FB に共有させていただいたら、やっぱソコが 1 番反応いいと。。FB をどのように使っているかは人それぞれだし、ブロックする機能もあるのでたまには FB も活用していこうかと思った次第です。いまシゴトでのコミュニケーションも Slack が多いですが FB も使いますしね。考えたら FB のかなりの割合がシゴトからかもー。ということで自分にとっての適切なビジネス系コミュニケーションは FB なんだと再認識w
それではまた次回。
今回の記事はいかがでしたか?
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