リテールメディアのファーストパーティーデータとは(前編)
リテールメディアの最大の価値は、小売業者が持つ自社データ(ファーストパーティーデータ)であることは言うまでもありません。小売業者のファーストパーティーデータとは具体的に何を指すのでしょうか。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
リテールメディアの根幹は、小売業者が持つ自社の購買データ(ファーストパーティーデータ)であることはみなさんもご存知のことだと思います。では具体的にはどのようなデータが存在し、収集され、ファーストパーティーデータとして活用されているのでしょうか。今回から前後編に分けてリテールメディアに必要なファーストパーティーデータについて触れていきます。今回はその前編です。
📣この記事でわかること
そもそもファーストパーティーデータとは
サードパーティーデータとは
なぜファーストパーティーデータに注目しているのか
ファーストパーティーデータの収集方法と活用法
ファーストパーティーデータには課題もある
小売業者のファーストパーティーデータ
それでは本編スタートです。
そもそもファーストパーティーデータとは
ファーストパーティデータは、企業が顧客から直接収集したデータ、情報を指す言葉です。このデータは第三者を通じてではなく、企業の ウェブサイト、アプリ、eメール、ソーシャルメディア、アンケートなど、企業が所有するチャネルを通じて収集されます。オンラインとオフラインの両方のソースからの顧客に関するすべての情報をファーストパーティデータと呼びます。
主なファーストパーティーデータ
顧客関係管理 (CRM) システム内のデータ
ウェブサイト、アプリ、ソーシャルメディアアカウントからのデータ
製品の購入からのデータ
POS システム
サブスクリプションベースのメール等からのデータ
顧客アンケートのデータ
お客様からのフィードバックから得たデータ
ロイヤリティプログラムからのデータ
サードパーティーデータとは
対照的に、サードパーティデータは、データが収集される顧客と直接関係のない企業によって収集されたデータ、情報です。サードパーティデータは、多くの場合、さまざまなウェブサイトやプラットフォームから収集され、サードパーティデータプロバイダーによって集約されます。ポイントは顧客と直接的な関係はないが、関連性のあるデータであることです。これが広告文脈では重要で、主にクッキー(Cookie)を使ったターゲティングがインターネット広告ターゲティングの根幹となっています。
たとえば、サードパーティデータは、次のようなチャネルから収集されることがよくあります。
モバイルアプリ
ソーシャルメディアプラットフォーム
データブローカー (仲介者)
eコマースウェブサイト
オンライン広告プラットフォーム
ちなみにセカンドパーティーデータというのもあります。
セカンドパーティーデータとは、他社が収集したファーストパーティーデータを指します。想定されるセカンドパーティーデータの流通は、メディアなどが自社で収集したデータ(ファーストパーティーデータ)を広告主や代理店に販売したり、子会社やパートナー企業と共有したりする形です。別の例としては、旅行代理店は特定の航空会社、ホテル、レンタカー会社と提携して予約及び予約データにアクセスし、顧客にパーソナライズしたパッケージや割引、おすすめ情報を提供できるようになります。
このように、セカンドパーティーデータの役割は主に、ファーストパーティーデータの拡張に利用されます。
なぜ、ファーストパーティーデータに注目しているのか
それは、世界的なプライバシー規制が背景にあります。プライバシー(個人情報)保護を推進するために、GDPR, CCPAなどが施行され、インターネット広告ターゲティングの根幹となる クッキー (Cookie) も個人情報の一つとみなされることにより、インターネットを閲覧するブラウザやアプリを提供するプラットフォーム (GoogleやApple等)が クッキーの使用と段階的に制限し、ついに 2024 年ブラウザの最大利用者を持つ Google もクッキーの使用を停止するのではないかというトレンドとなっています。いよいよ、インターネット広告業界も 20 数年に及ぶ遺産とも言うべきクッキーに分かれを告げざるを得ない状況になっているのです。
クッキーが使えなくなるとインターネット広告のターゲティング精度は大きく低下します。精度が落ちるということは、マーケティングコストが上がり、ROI が低下することを意味します。クッキーが無い世界いわゆるクッキーレスが訪れると、インターネット広告を活用していたマーケターは岐路に立たされることが容易に想定され、どのようにターゲティングをしていくべきかが非常に大きな注目を集めています。そこで注目を集めているのがファーストパーティーデータの活用です。
ファーストパーティーデータ活用の主なメリットは下記です1。
信頼性が高い
ファーストパーティデータは自社で収集したものなので、情報の出所が明確です。しかも、「いつ、どこで、誰から入手したものか」という関連情報が明らかであるため信頼性が高く、データの精度も高いという特徴があります。複数のプラットフォームから収集されるサードパーティデータと比較すると、信頼性という点で大きな差があります。また、自社の顧客、自社製品・サービスに興味を持つターゲット層から直接収集したデータですから、自社ビジネスとの関連性が強いという点も、ファーストパーティデータならでは優れた点といえます。
費用対効果が高い
セカンドパーティデータやサードパーティデータは、他社から提供されるデータです。そのため、購入する場合はもちろん、共有の際にもコストが発生することがあります。しかも、データの鮮度は時間とともに落ちていくので、最新のデータが欲しい、アップデートするとなれば、その都度コストを支払う必要があります。
しかし、ファーストパーティデータは、自社収集の情報です。最初にデータ収集の仕組みさえ作っておけば、常に新しい情報が蓄積され、鮮度の高い情報を低コストで利用できます。
プライバシーのリスクが低い
情報の出所が明らかであるということは、プライバシーリスクが低いということでもあります。情報収集の際にプライバシーポリシーを明確にしておき、コンセンサスがとれた範囲内だけで活用できるので、プライバシー侵害の危険性が低く、意図せずにコンプライアンス違反を犯すリスクも抑制できます。
ファーストパーティーデータの収集方法と活用法
ファーストパーティデータを収集するには、ユーザー(顧客・消費者)は自分のデータが収集されることに同意する必要があります。
通常、企業は自社のウェブサイトまたはアプリに追跡ピクセルを配置します。顧客がこれらのいずれかを初めて訪問すると、通常、行動の追跡に同意するよう求める何らかのバナーまたはポップアップが表示されます。CMP (Concent Management Platform) が利用されることが多い。
ユーザーが同意して同意すると、多数のデータポイント (前述のような情報) が収集され、CRM システムに保存されます。
ファーストパーティーデータの活用法として、企業は主にパーソナライズされたマーケティング活動と顧客エクスペリエンス (CX) の向上のためにファーストパーティ データを使用します。さらに、実際の顧客の行動を分析することで、企業がデータに基づいてより多くの情報に基づいた意思決定を行うのに役立ちます。
ファーストパーティーデータには課題もある
このように、クッキー規制に伴いサードパーティーデータ活用の有効性が薄れ、ファーストパーティーデータへの注目が明らかになったと思いますが、課題もあります。
規模感のあるファーストパーティーデータが少ない
ファーストパーティ データは顧客が提供する情報、または企業がユーザーと行うやり取りに限定されるため、データの規模大きくないことが珍しくありません。特に新しい企業やニッチな企業など企業規模が大きくない場合、統計的な有意性を得たり、より多くのユーザーに大規模にリーチしたりすることが難しい場合があります。日本市場では、積極的にファーストパーティーデータの収集をしていない、個人情報を取得することのリスクなどが要因となり、このスケーラビリティは顕著な課題です。
信頼性が低く不完全なファーストパーティーデータ
自社データを持っている場合でも、収集する方法や目的などの背景が不透明、適切な監視及び管理がなされていない、不正確さや偏見などが含まれている可能性がある場合があります。
保存されたファーストパーティーデータのサイロ化
収集したファーストパーティーデータが、部署、組織別に管理、保管されているケースがあり、必ずしも一元管理されていない可能性があります。
データプライバシーの懸念
すべての企業は、自社データの収集方法に関係なく、ユーザーデータのプライバシー規制を常に最新の状態に保つ必要があります。コンプライアンスを確実に達成するには、時間と従業員のリソースがかかります。
データの劣化
顧客プロフィール情報が経年劣化することです。例えば、顧客の引っ越しなどに伴う住所、電話番号または電子メールアドレスの変更など、不正確な顧客プロファイルを最新の状況にメンテナンスする必要があります。
リソースが必要
ファーストパーティデータの収集には時間がかかります。それは「一度やれば終わり」な仕事ではありません。ファーストパーティデータは、テクノロジーへの投資、データ分析、長期にわたる正確な顧客情報の維持など、収集後の一定レベルの維持を必要とします。
小売業者のファーストパーティーデータ
小売業者はその業種柄、顧客の維持率とロイヤリティの向上を常に改善する必要があるため、ファーストパーティーデータの活用を前向きに実施してきたはずです。
スケーラビリティの大小にかかわらず多くの小売事業者は、業種柄、購買データを得やすい環境にあり、自社データを活用し顧客維持率を向上させる為に、CDP (Consumer Data Platform) を利用し、デモグラフィック、サイコグラフィックを通して顧客のニーズを理解し、商品の開発、調整を実施し顧客とのエンゲージメント率を改善しています。
外部の調査や、データなどの情報源に依存するのではなく、ファーストパーティのデータは、消費者からの承認を必要とせずに、消費者の行動や購買習慣を直接知ることができ正確性もあり、また外部へのコストを抑制することができます。
小売業者にとってのファーストパーティーデータの活用法
顧客エンゲージメントを強化し、貴重なデータを生み出す洗練されたロイヤルティプログラムを開発する。
このデータを使用してコンテンツ、コミュニケーション、オファーをカスタマイズし、関連性の高い魅力的なエクスペリエンスを顧客に提供する(パーソナライゼーション)。
インサイトを活用してターゲットを絞った広告の機会を提供し、それによって新たな収益源を創出する(リテールメディア)。
豊富なデータを実用的なレポートに変換し、ビジネス成長のための新たな機会を創出する(データとレポートの収益化)。
〆まとめ
いかがでしたか?
ファーストパーティーデータの基本から、付随するセカンド、サードパーティーデータ、小売業者が持つファーストパーティーデータについて触れてきました。みてきたとおり、小売業者はファーストパーティーデータを入手しやすい環境であり、実際活用しています。インターネット広告文脈ではクッキーレスに影響されないソリューションとしてファーストパーティーデータを軸としたリテールメディアネットワーク (RMN) は今後も期待される広告商品であり、マーケティングツールでもあります。次回は最後に紹介したRetail 1st party data flywheel と実践の為の視点をご紹介する後編です。
🖊編集後記
ゴルフってホント、ドマゾなスポーツの一つだなと最近思います。実は最近、めっちゃスコアの調子が悪いんですね。そもそもフォームとスコアがリンクしないスポーツで、変なフォームのおじちゃんが普通に 80 台で回ってきたりします。一般的に 90 台で結構うまいと言われます。ゴルフは人によって満足度を得るポイントがスコアだったり、フォームだったり、一緒に回る人とのコミュニケーションだったり人それぞれ異なるのですが、それでもスコアなわけです共通言語として。
で、もうかなりゴルフ歴はある自分としてはいまのスコアに満足できないので、一生懸命時間を見つけては練習するんですが、スコアに繋がらないんですね。。
毎回がっかりして帰ってきては、反省、復習の日々。それが面白いんですw
それではまた次回。
今回の記事はいかがでしたか?
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