カタログ通販とリテールメディアの相性
カタログ通販はトラディッショナルなビジネスモデルですが、オフラインからオンラインに時代ともに進化し現在に至ります。リテールメディアとカタログ通販ビジネスモデルとの融合について考えていきます。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
カタログ通販をご存知の方も多いと思います。カタログ通販はインターネット以前は紙に印刷されたカタログ冊子に多数の商品が掲載され、気に入った商品を電話、FAX、はがきなどでオーダーするという形から、インターネットが普及して以降、印刷された冊子から電子冊子に形を変え、紙ではなくモニターやタブレット、スマートフォンなど複数の閲覧デバイスに対応し、オーダー形式も e-mail、ウェブサイト、アプリなどのオンラインでの申し込み、決済に移行してきました。カタログ通販は形を変えて今なお、ニーズに応え続けているトラディッショナルなビジネスモデルです。
今回は、このカタログ通販とリテールメディアビジネスとの融合について考えていきます。
📣この記事でわかること
カタログ通販とは
カタログ通販のアセット
カタログ通販とリテールメディアの相性
カタログ通販事業者がリテールメディアを検討すべき理由
カタログ通販事業者のリテールメディア導入事例
それでは本編スタートです。
カタログ通販とは
カタログ通販事業者は、商品やサービスを消費者に紹介するためにカタログを使用し、注文を受けた後に商品を直接顧客に配送する形態の小売業者です。このビジネスモデルでは、実店舗を持たずに商品を販売します。特徴としては下記となります。
カタログによる商品紹介
カタログ通販事業者は、紙のカタログやオンラインカタログを通じて、商品情報を顧客に提供します。このカタログには、商品の写真、説明、価格などが掲載されています。
リモートでの注文受付
顧客は、電話、郵便、オンラインなど、さまざまな方法で注文を行うことができます。最近ではオンラインでの注文が主流になり 24h いつでも受注が可能になっていますが、従来型のカタログ通販事業者の場合は、郵送や電話での注文も一般的です。
直接配送
商品は倉庫や配送センターから直接顧客のもとへ配送されます。実店舗を介さずに、顧客が自宅で商品を受け取ることができるため、便利で時間を節約できるというメリットがあります。一方で 2024 問題に象徴されるように物流コストの増大が利益を圧迫することに直結しています。
幅広い商品の提供
カタログ通販事業者は、衣類、家具、家電製品、食品など、多種多様な商品を取り扱うことができます。カタログのページ数やオンラインストアのデータベースによって、非常に多くの商品を紹介することが可能です。
顧客データの収集と活用
顧客と直接取引を行うことで、購買履歴や顧客の好みなどのデータを確実に収集し、マーケティングや商品開発に活用することができます。
カタログ通販事業者は、これらの特徴を生かして、特定のニーズを持つ顧客層に対して、ターゲットを絞ったマーケティングやサービス提供を行うことが可能なビジネスモデルです。
カタログ通販事業者のアセット
高精度の顧客データ(ファーストパーティーデータ)
カタログ通販事業者は、前述したようなビジネスモデルから、顧客の購入履歴、個人情報、購買行動、好み、反応履歴などの詳細なデータを保有しています。これにより、顧客のニーズや嗜好を深く理解し、パーソナライズされたマーケティングや製品提供が可能になります。
ダイレクトマーケティングの専門知識
カタログ通販は、ダイレクトマーケティングの一形態です。顧客と直接コミュニケーションを取り、効果的なマーケティング戦略を実行するための専門知識を持っています。
膨大な商品ラインナップ
物理的な店舗を持たないため、在庫を大量に抱える必要がなく、多様な商品をカタログやオンラインで提供することができます。これにより、幅広い顧客のニーズに応えることが可能です。
柔軟な在庫管理とロジスティクス
カタログ通販事業者は、高度に最適化された在庫管理と物流システムを持っており、効率的に商品を顧客に配送することができます。これにより、コスト削減と顧客満足度の向上が可能になります。
マルチチャネルの販売戦略
オンラインとオフラインのカタログを組み合わせた販売戦略を展開できるため、顧客が好む購買チャネルを選べる柔軟性があります。これにより、顧客エンゲージメントとリーチを最大化することができます。
印刷されたカタログは、いまだ顧客コミュニケーションツールである
印刷されたカタログを受け取った 2/3 人がブランドのウェブサイトを訪問し、55% がカタログで見たものを購入1する。また 45% はマーケティングメールよりも郵便物で送られてきたカタログに気づき、60% がカタログを眺めながら座って自分の時間にカタログを見ることが楽しいといっています。
顧客サービスと関係構築
カタログ通販事業者は、顧客から直接フィードバックを得られるため、顧客サービスを向上させ、長期的な顧客関係を築くことができます。
認知度と多くのリピーター
事業歴の長いカタログ通販事業者はカタログ通販事業者としてのブランドの認知が高く、また多くのリピーターを抱えています。
このようにカタログ通販事業者には独自アセットがあり、これらの多くはリテールメディアでの強みに直結する可能性が高く、リテールメディアネットワークの競争力を高め、広告主、顧客に継続的な価値を提供することできるでしょう。
カタログ通販事業者がリテールメディアネットワークを検討すべき理由
パーソナライズされた顧客体験の強化
カタログ通販事業者は、顧客の購買履歴や好みに関する詳細なデータを持っています。リテールメディアを導入することで、これらのデータを活用し、顧客によりパーソナライズされた広告やプロモーションを提供できます。これにより、顧客の関与度を高め、購買意欲を刺激することができます。
新たな収益源の創出
リテールメディアは、自社のプラットフォーム内での広告販売を通じて、新たな収益源を生み出すことが可能です。これにより事業の収益性を向上させ、長期的な成長を支えることができます。
顧客データのさらなる活用
カタログ通販事業者が保有する顧客データは、リテールメディア戦略を通じてさらに価値を生み出すことができます。顧客の行動や反応をリアルタイムで分析し、マーケティング戦略の最適化や新しいビジネス機会の発見につなげることが可能です。
ブランド価値の向上
効果的なリテールメディア戦略は、事業者のブランド認知度とブランド価値を高めることにも寄与します。顧客に有益で関連性の高い情報を提供することで、ブランドの信頼性とロイヤルティを構築できます。
競争優位性の確立
リテールメディアを導入することで、他のカタログ通販事業者やオンライン小売業者との差別化を図り、市場における競争優位性を確立することができます。独自のデータとマーケティング戦略を駆使して、顧客にユニークな価値を提供することが可能になります。
これらの理由から、カタログ通販事業者がリテールメディアを導入することは、事業の成長と顧客体験の向上に有効な戦略と言えるでしょう。
カタログ通販事業者のリテールメディア導入事例
Argos Ltd
イギリスのカタログ通販事業者 Argos Ltd は 1972 年に設立されたカタログ通販事業者です。ギリシャの都市 Argos にちなんで名付けられました。イギリス国内で最大の店舗型リテーラーの 1 つで、イギリスやアイルランドを中心に店舗とオンラインでカタログ販売をしています。 中国にもフランチャイズしています。取り扱う製品も、電化製品、子供用品、美容用品、ジュエリー、スポーツ用品、家具と多種類に渡り販売しています。50 年の歴史の中で、多くの変化を遂げ、現在では年間1 億 3,000 万人以上の顧客が訪れる人気のショッピングスポットとして機能しています。Argos は英国で 4 番目に人気のあるオンライン小売業者であり、 2021 年の時点で520 万米ドル以上の売上をあげています。2
彼らはリテールメディアとオムニチャネル戦略を採用する好例です。Argos の購入の 70% 以上はオンラインで始まります。Argos は当初、家庭にカタログを配布する戦略を採用していましたが、iPad ステーションなどの先進的な店内技術を利用して顧客体験を向上させました。これにより、顧客はカタログを閲覧し、店舗にない商品も購入できるようになりました。また、オンラインと物理的な小売チャネルを統合し、顧客がオンラインで商品を予約して店舗で受け取ることができるようにしました。さらに、ターゲット広告やコンテンツマーケティングなど、さまざまなオンラインプロモーション戦略を採用して顧客にリーチしています。また、ロイヤリティプログラムを通じて、ブランドがオムニチャネルでターゲットを絞ったパーソナライズされたショッピング エクスペリエンスを作成するために活用できる、完全に許可された 220 億行を超えるデータを構築しました。 3
Argosのターゲット市場
Argos は幅広い商品を購入できる総合小売店であるため、ターゲット層は一般家庭です。同社は2020年にカタログの印刷を停止したが、英国とアイルランドの数百万世帯にカタログを配布した。さらに Argos の顧客満足度調査を頻繁に実施し、常に適切な顧客を適切な製品でターゲットにしていることを確認しています。同社は競争力のある価格を提供しているため、価格に敏感な顧客をターゲットにすることができます。さらに、Homebase ブランドを開始し、より裕福な顧客に家庭用品を提供しました。
Argos の価格戦略
同社は競争力のある価格を提供するために市場を常に監視しています。また、ブランドを維持し、顧客に価値を提供するために、小売業者は頻繁にセールやプロモーションを提供し、電子メールに登録したユーザーにクーポンや割引コードを提供することもよくあります。アルゴスは、価格を設定する際に、生産コスト、場所、その他の要素も考慮します。
Argos のマーケティング戦略
Argos の販売には Web サイトも含まれており、顧客はそこから商品を自宅に配送できます。また、英国内に複数の倉庫を運営しているため、顧客はオンラインで商品を注文し、店舗で受け取ることができます。Argos のプロモーション戦略には主にサービスエリア内の世帯にカタログを送付することが含まれていました。会社が成長し、競争の激化に直面するにつれて、よりターゲットを絞った広告を掲載しオンラインでストアを宣伝し始めました。
Argos は現在、オンライン広告、ソーシャル メディア、ビデオ、コンテンツ マーケティングを利用して、商品を宣伝し、人々を店舗に集客します。同社は、ユーザーフレンドリーでモダンなデザインの Argos ウェブサイトに重点を置き、オムニチャネル戦略を拡大し続けました。たとえば、ウェブサイト上の買い物客は、店舗で商品を簡単に受け取るための予約番号を受け取ります。Argos のオムニチャネルマーケティング戦略の各要素は、ブランドを現在の地位に引き上げるのに役立っています。
Argos その他の情報
アルゴスの市場シェアは堅調です。このストアは 2018 年に英国の全デジタル売上の 59% を占めました ( Statista )
英国の家具購入者の半数以上がアルゴスを好む ( Statista )
オンライン家具購入者の約 40% が Argos を使用する可能性があります ( Statista )
2023 年 1 月のアルゴスの訪問者数は 4,933 万 6,000 人でした ( Sem Rush )
アルゴスはスポーツダイレクトやナイキなどの小売業者を上回り、2020 年に英国でスポーツ用品とアウトドア製品の売上をリードしました ( Computer Weekly )
アルゴスの顧客は2016 年に同社から送信されたすべての電子メールの 35% を読んでいましたが、これは小売業界としては高い数字です。(インターネット小売)
2021 年の Argos のトップ カテゴリはおもちゃ、ホビー、DIY ( eCommerce DB )
〆まとめ
いかがでしたか?
カタログ通販事業のリテールメディアとの相性はよく、従来やってきた事業の経験、アセットがリテールメディアに必要なアセットと重複していることが多いです。一方でカタログ通販事業者がリテールメディアを導入するにあたり、考えなくてはいけないことは、リテールメディアという概念を具体的な戦略に落とし込むことです。
自社のアセットを把握し、リテールメディアで何をするかを明確にする。ビジネス目標、成功の指標を策定する。
リテールメディアネットワークを立ち上げる決断に至ったならば、それを立ち上げるために必要なもの、考えをリストアップし、内製でするもの、アウトソースするものを分けるなどです。
自社アセットの評価
どのようなファーストパーティデータがあり、どのようにアクセスして利用できるか?追加の外部データソースを統合する必要があるか?
自社データの品質、深度とボリュームはどれくらいか?
また、リテールメディアはそのデータにどの程度アクセスできるか?自社のデータに足りないものはあるか?より包括的なアプローチのためにどの外部データソースを統合する必要があるか?
既存の取引先の数、扱っている商品数の精査
オウンドメディアのスペック(EC 取引量、売上高、アクセス数、ユーザー数、検索数など)
デジタル広告のセールス、運用機能の有無、規模
ビジネス面
リテールメディアビジネスの目標規模と範囲は?
全体売上の◯% or ◯◯ 円、自社でどこまでリテールメディアにコミットするのか?当初のターゲット顧客は誰?
想定される広告主(メーカーやブランド)をリストアップできるか?成功をどのように評価し、時間の経過とともに戦略を変更できるか?
リテールメディアネットワーク (RMN) の立ち上げ
RMN に必要な機能は?
RMN でどこまでサポートするのか(オンラインのみ、オフラインも含めるなど)
成功の可能性が最も高いのは、どのチャネルか?
オンサイトか、オフサイトか。
リテールメディアキャンペーンではどの商品カテゴリに重点を置くのか?
分析やクリエイティブコンテンツなどの付加価値サービスをメーカーやブランドに提供できるか?
RMN 運用に必要なリソースや役割のリストアップ
組織・チーム
リテールメディアチームの立ち上げは?規模は?
どのチームに所属するのか?
担当役員はおけるか?社長もしくは経営陣直系ラインに配置できるか?
リテールメディアと他の事業部門との間の利害の対立にどのように対処する予定か?
リテールメディアチームにとって重要な役割は何か?
また適切な人材はいるか?リテールメディアチームと他のチームの間で調整をどのように成功させるか?
リテールメディアビジネスを構築するための戦略において最も重要なステップは何か?
🖊編集後記
なんかすごく残念なニュースがありましたね。これからというときに。
依存症なのか癖なのかわからないですが、なんかなあ、残念すぎます。みんな一気にどんよりな感じになったんじゃないかな。
それではまた次回。
今回の記事はいかがでしたか?
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