リテールメディアがクッキーレス時代に輝きを増すことを表す 5 つのグラフ
くるくる詐欺のひとつ、クッキー (Cookie) なくなる問題もいよいよ佳境に入ってきました。EMARKETER の興味深いグラフからリテールメディアに対する影響を触れていきます。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
前回、前々回とファーストパーティーデータとリテールメディアについて触れてきました。サードパーティークッキーがいよいよ今年 (2024年) 廃止される予定です。EMARKETERのアナリストは Google がクッキー (Cookie) の廃止を再び延期することはないと確信しているようです。今回はサードパーティークッキーがなくなることでの広告への影響を EMARKETER の興味深いグラフから探っていきます1。
📣この記事でわかること
ほとんどの広告主は依然としてプログラマティック広告をクッキーに依存している
クッキーの廃止は広告主の優先取引方法に影響を与えない
ファーストパーティーデータが次のベストソリューション
広告予算はコンテクスチュアルデータとファーストパーティーデータを重視
ID フリーのターゲティングには AI が不可欠
それでは本編スタートです。
1) ほとんどの広告主は依然としてプログラマティック広告をクッキーに依存している
オープンウェブにLexicon ID などアドレッサブルなインフラストラクチャを提供している 33Across の 2023 年 11 月のデータによると、2023 年第 3 四半期の米国の 10 業界のプログラマティック広告購入の 4 分の 3 以上が クッキー (Cookie) に依存していたと伝えています。
クッキーの依存率が高い業種 TOP 3
飲料食料品 (Food & Drink) : 87%
旅行 (Travel) : 87%
技術 (Tech) : 86%
飲料食料品業と旅行業が同率 1 位で 87%、ほとんど差がなく技術業界でした。
正直続く、エンターテインメント、電話通信、医薬品、自動車、金融
クッキーの依存率が低い業種 TOP 3
小売 (Retail) : 78%
保険 (Insurance) : 79%
金融 (Finance) : 83%
小売が 1 番クッキーの依存度が低い結果 (78%) となっています。続いて保険の 79%、少し離れて金融の 83% でした。
少し気になるのは小売と保険の 2 業界と 3 位の金融の間に 4 ポイントもの差があることです。他の 8 業種は小刻みに 87% ~ 83% と 1 % 刻みでつながっているのですが、小売と保険のみ 70% 台でした。
小売と保険のクッキー依存率が低いのはなんでしょうか??
以前の記事で、リテールメディアを横展開できる 3 業種を記事にしましたが、そのうちのひとつが金融でした。ちなみに他の 2 業種は旅行と健康/フィットネスでした。
廣瀬個人的にも、リテールメディアの横展開(いわゆる自社のファーストパーティーデータを使って、広告ビジネスに参入する=コマースメディアと読んでいますが)できるのは強力な会員組織があること、そしてロイヤリティがあることが共通しています。グラフをよく見ると、グレーの棒グラフは「Cookie alternative」とあります。上位 2 業種はロイヤリティのある消費者そして会員組織がが構築されやすいのと、上質なファーストパーティーデータを持っている可能性が高い為、何らかの代替手段に移行できているのかもしれません。もしくは、積極的に代替手段に移行している業界とも言えるのかもしれません。
2) クッキーの廃止は広告主の優先取引方法に影響を与えない
下記のグラフはプログラマティック広告で取引される主に 3つの取引形態です。 2013 年から 2023 年までの 10 年間の Open Exchange (オープンオークション) 、Programmatic Direct (プログラマティックに直接買う広告)、そして Private Market Place (いわゆる PMP)の推移です。
2013 年はオープンオークションが全盛であり、最も人気のある取引方法でした。プログラマティックディスプレイ市場のほぼ 4 分の 3 (74.5%) を占めていました。それ以降 10 年間で、広告主が買付方法をオープンオークションから、プライベートマーケットプレイス (PMP) にシフトし、買付場所をダイレクトプラットフォームであるソーシャルメディアやリテールメディアネットワーク (RMN) へ依存度を高めたため、そのシェアは 10.2% に低下し、今では最も人気のない取引方法になっています。
日本ではこの状況と合致しているところとそうでないところがあります。
合致していることは、ここでいう Programmatic Direct がソーシャルを含めたダイレクトに買付するプラットフォームと定義すると、日本の広告予算の約 80% 以上が大手プラットフォームに予算を支出していることを考えるとこの黒いグラフは合致しているといえます。
合致していないことは、PMP とオープンオークションです。米国では 2020 年に PMP がオープンオークションを上回っていますが、日本ではそうではありません。クッキーのくるくる詐欺もそうですが、PMP は更にひどいくるくる詐欺と呼ばれるほど、PMP は日本で活用されていません。そしてオープンウェブでの広告はほとんどが未だオープンオークションで広告が配信されています。ここでは文字数をとってしまうのでその理由を記しませんが、マーケットの違い、マーケターの考え方の違いです。
米国のプログラマティック広告主は、自社データを中心とした戦略に再び重点を置くようになり、隠れた料金 (アドテク税やブラックボックスなど) を削減し、データ漏洩のリスクを最小限に抑え、二酸化炭素の使用量を削減する、クローズドでプライベートなエコシステムへの投資を増やしています。
米国ではプログラマティック広告 (DSP/SSP) が盛んに活用されています。ファーストパーティーデータ、サードパーティーデータなど多様なデータを活用してターゲティングした広告を配信しています。リテールメディアも DSP や独自のリテールメディア買付ツールから広告の購入が行われます。このような共通した背景があるため、米国ではリテールメディアへの広告予算のシフトが急速に行われているわけです。
3) ファーストパーティーデータが次のベストソリューション
共通 ID (ユニバーサルID) ソリューション事業者の ID5 の 2023年8月 のデータによると、世界中のマーケティング専門家の 4 分の 1 が、ファーストパーティのユニバーサル ID がクッキーの廃止に対する最も現実的なソリューションであると考えています。
代替 ID ソリューションがより重要になるにつれ、ファーストパーティデータをめぐる競争は激化しています。しかし、ファーストパーティデータに依存するソリューションは、膨大なデータセットを持つ大企業に有利である一方、中小企業は同じアプローチを取るために多額の投資を余儀なくされる可能性があります。
ファーストパーティーデータのスケーラビリティは国内、国外問わず健在しており、中でも日本は人口も限られているので米国程のスケーラビリティを持ったファーストパーティーデータを所有する企業は限られます。しかしそのような中でも米国ではたくさんの小売業者がリテールメディアに参入しています。これはファーストパーティーデータ自体が、スケーラビリティだけで勝負がつくわけではないことを示しています。また、前述した部分と重複しますが、クッキーレスに伴い、相対的に PMP への期待は日本でも高まっています。リテールメディアはファーストパーティーデータの活用が軸となり、また広告の取引手法は PMP がメインとなると考えられるため、このような背景から、廣瀬個人としてはリテールメディアが日本のオープンウェブを救うとも感じている次第です。
4) 広告予算はコンテクスチュアルデータとファーストパーティーデータを重視
ターゲティングソリューションベンダーの Proximic の 2024 年 1 月のレポートによると、米国の広告主はターゲティング予算の 28% をコンテキストデータに、27% をファーストパーティデータに充てているという。
Proximic の別のレポートでは、米国のマーケターの 54% が 2023 年にコンテクスチュアルデータの利用を増やす予定であることがわかった。しかし、コンテクスチュアルターゲティングを成功させるには、AIやその他の行動戦術で強化する必要があります。
ファーストパーティーデータとコンテクスチュアルデータの 2 強がクッキーレス時代の広告支出を担っていくのは自然な印象です。
5) ID フリーのターゲティングには AI が不可欠
パーソナライズド B2B リサーチサービスの Ascend2 の2023年12月のデータによると、世界中のマーケティング担当者は、AI をマーケティングに活用するメリットとして、ターゲティングの向上が効率化に次いで 2 番目に大きいと考えている。
ジェネレーティブ AI は、限られたファーストパーティデータしか持たない広告主にとって、確率モデルを動かすために必要なインプットが少ないという点で重要な役割を果たす。小規模なブランドや代理店は、これらのツールを活用することで、識別子を使わずにアドレサビリティを拡大することができる。
ID ソリューションは有望であるものの、ファーストパーティーデータを ID 化するソリューションも含め、多数の ID ソリューションがありどの ID が 1 番使われるのかなど全くわからない状態です。またコストもかかります。AI を使うことで ID フリー ( ID 無し) のソリューションが実現されるのであればこれはこれで期待なのですが、、、まったくわからないですね。
〆まとめ
いかがでしたか?
クッキーレス時代にリテールメディアが輝きを増すであろう 5 つのグラフに廣瀬は見えました。みなさんはどう思いますか?
問題は私たちのマーケットである、日本でどうなのか?ですよね。日本の小売業のファーストパーティーデータのスケーラビリティ、取り扱い方、精度、いろいろ気になるところはあります。しかしファーストパーティーデータを広告プラットフォームに乗せて、広告チームを持って(もしくは協力して)販売していくスキームが確率できれば米国に引けを取らないリテールメディアネットワーク (RMN) が立ち上がると思います。だって、ファーストパーティーデータ=顧客データは小売業の宝であり、それをたくさん保有する、精度をあげるという作業は、従来も小売事業者としてロイヤリティーブログラムの中で行ってきたはずですから。
🖊編集後記
インスタで検索の虫眼鏡マークをタップすると検索となるのですが、この面でインスタが判断する「その人」というのがわかりますよねw 見る頻度の高い、たくさん見るなど興味が凝縮されているページだからです。イコール、プライベートの塊なので見られるのが 1 番恥ずかしいページかもw
ちなみに廣瀬のインスタは 9 割以上がゴルフ関連のアカウントが出ていました、あと猫(ホッ)。
それではまた次回。
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