こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
個人的に順調に欠けまして、久々のポストになりますm(_ _)m。この辺は編集後記でチラッとお伝えしますが、まずは今週大きなリリースがありましたね!
この第一報を目にしたときの個人的な感想は「そうきたかぁ。大胆かつポジティブなインパクトが日本でもでるかもなー」でした(月並みw)。
リテールメディアの領域では小売業が(厳密には小売業に限らない)リテールメディアという広告プラットフォームを自社で内製で立ち上げることは稀で(Amazonとか)、ほとんどの小売業者は自社のリテールメディアを構築するために、リテールメディアプラットフォームベンダーと協業することが一般的です。現在グローバルでは、リテールメディアのベンダーとしてCitrusAd, Criteoの2社が大きくリードしており、Microsoftはそれに次ぐ勢いです。ですので、ある意味業界の2番手、3番手が統合したようなイメージがこのリリースから受けたファーストインプレッションです。
Criteoのリテールメディアプラットフォームはグローバルで多数の大手小売事業者に導入されており、各小売事業者の広告事業をサポートしています。また、バイヤーがリテールメディアを買付できるリテールメディアのアドネットワークとしての間口を提供しています。このようなグローバルでもトップクラスで日本でもおなじみの Criteo 社と、それに次ぐ勢いのの Microsoft 社によるリテールメディア領域による提携にはワクワクしかないですね!
実は私、廣瀬は Microsoft が実は一番リテールメディア領域でポテンシャルあるんじゃないか説を勝手に持っていました。すでにリテールメディア領域にプロダクトリリースしてるからってだけではなく、彼らが持つアセット(資産)が大きく秀でているからです。まず検索システム Bing を持ち、ブラウザの Edge,ポータルサイト MSN、ソーシャルメディアLinkedin,チャットツール Skype, そして既に Microsoft Advertising として Web, App そして、Netflix などの CTV/OTT に対しても広告配信しており、Xbox,複数の大手ゲーム開発プラットフォームをも買収しています。もちろん Windows などのソフトウェア、ハードウェアまでここまでの領域をカバーしている会社は類をみないです。Microsoft はインターネットの始祖であり、巨人なのです。当然ファーストパーティーデータは世界中に膨大にあり、ユーザーベース(ユーザーの購買履歴、行動など)は既に世界トップクラスなのは想像に固くないです。まさにリテールメディアでなくコマースメディアを実践することが容易なのです。こういう意味で一番のポテンシャルを持っていると思っていました。ただ、巨大過ぎるが故にどこまでリテールメディアとして彼らの資産を絡められるのかがポイントだよなーとも思っていました。彼らの規模感からしてリテールメディアというビジネスは小さい枠組みとみなされても不思議無いからです。ただ、その Microsoft がリテールメディアに本腰を入れてきた?ということは、米国で既にサードウェーブとなり目下、検索、ソーシャル広告の予算を削り始めていることの証左ともいえるのかもしれません。
前置きが長くなりましたが今回は、このリリースとそれに伴うインパクトなどを考察していきます。
ちなみに、Criteoのリリースでもあるようにグローバルではリテールメディアという言葉からコマースメディアという言葉にシフトしてきています。理由は当 RMO をご覧頂いている方は認識されているとは思いますが、このリテールメディアという型(仕組み、スキーム)は小売業にのみ当てはまるわけではなく、平たく言うと決済(お金のやりとり)が絡む業界・業種でこの型が当てはまります。この視点でより大きな括りとしてコマースメディアと呼ぶようになってきています。ただ、日本ではリテールメディアもまだアーリーステージですし、ここでコマースメディアという言葉を混ぜると、単純に違うもの?と混乱を招く可能性もあるので、また当RMOも「Retail Media Online」にしているのでw しばらくリテールメディアという言葉で統一しておきます。
📣この記事でわかること
今回のリリース内容
Microsoft の本気度
本提携のまとめ
それでは本編スタートです。
今回のリリース内容
この提携により、Microsoft Advertising の幅広い需要が Criteo の 225 の小売業者からなるグローバル ネットワークにもたらされます。Microsoft Advertising はまた、優先オンサイト メディア パートナーとして Criteo と連携し、Criteo の収益化テクノロジーを Microsoft Advertising の小売業者クライアントに拡張して、さらに統合された小売メディア エコシステムを構築する予定です。
最初に飛び込んでくるのは、Criteo が持つ 225 の(グローバルの)小売業者で構築されているグローバルネットワークに、Microsoft Advertising が展開する 187 のマーケット(国)にある 50 万に及ぶブランド(広告主)から買付が発生する機会を得る。
また、Microsoft Advertising が既に導入されているリテールメディアにはCriteoのオンサイトのテクノロジー(プロダクトリスティングに代表されるものと考えられます)を導入していくという内容です。
平たく言えば、Microsoft 側は Criteo の大きなリテールメディアアドネットワークのデマンドとして買付する機会が増え、Criteo 側としてはデマンドが強くなれば Criteo のリテールメディアのネットワークの収益性が上がるということで小売事業者へより多くの収益を返すことができるようになります。一方、後半の Criteo のオンサイトテクノロジーを既存の Microsoft の小売事業者へ導入できれば従来プロダクトとして提供できていなかった?リテールメディアのドル箱プロダクトである、プロダクトリスティング機能を提供できるようになるので、Microsoftを導入している小売事業者は収益性があがる機能を導入できるようになります(リリース文面からの推測ですが)。
次に、リリースの目的となっている「急成長するリテールメディア業界の断片化に対処するために関係を拡大」について。
リテールメディアの断片化の解消を上げています。日本ではこのリテールメディアの断片化について、ピンとこないかもしれませんがリテールメディアのメジャメントやレポーティングなどをサポートするベンダーの mimbi によると既に世界では200ものリテールメディアネットワークが立ち上がっており、10年以上の歴史をもつ米国のリテールメディア業界だけでも80のリテールメディアが存在し、日々その数は増え続けています。米国の小売業者の幹部の64%が2024年末までにリテールメディアネットワーク (RM) を導入する予定と回答し、さらに 78% が、この期間内に RMN プラットフォーム プロバイダーに対して RFP (提案依頼書) を依頼する予定であると回答しています1。もはやほとんどの小売業者がアドネットワーク化していくような流れができています。いずれ統合、淘汰もされるはずですが、驚くべきはリテールメディアが始まって 10年経つ現在がこの状況だという点です。
一方、世界のデジタル広告費は増え続けており、2024年4月に発表された IABの年次インターネット広告収益レポートによると、2023年の米国インターネット広告収益は2,250億ドルと過去最高を記録し、2022年から2023年にかけて全体で前年比7.3%増加しました。その成長ドライバーは、リテールメディアで広告収入は前年比 16.3% 増加し、2023 年には 437 億ドルに達します。主要な e コマース企業はすべて、将来の成長に対してリテールメディア プラットフォームに投資しています。
背景には、サードパーティーCookie の終焉、検索、ソーシャルメディアに次ぐパフォーマンス広告であるリテールメディアの台頭により、バイヤーはリテールメディアに投資せざるを得ない状況です。広告を使ってパフォーマンスを最大化しようとする代理店や広告主は、どのリテールメディアが良いパフォーマンスを発揮するのかを精査し予算を割り当てていきますが、現在バイヤーはひとつのRMNのみを買い付けることはしません。複数の RMN を買い付けることが一般的です。小売業者向けに構築され、リテールメディアを簡素化するように設計された初のソリューションであるTurbyne のレポートによると、ブランド(広告主)は、過去 3 か月間に平均 25 社のメディア パートナー、22 社のメディア エージェンシー、23 社のアドテクノロジープラットフォームと連携していると言っています。このように既にリテールメディアを取り巻く広告取引は複雑性を増し、同時にパフォーマンスロジックの透明性の欠如などの課題が発生し、このリリースがこのリテールメディア業界の断片化の解消につながることを訴えています。
Microsoft の本気度
Microsoft 側のアナウンスから、リテールメディアの成長やインターネット広告でのインパクトを認識し、最優先事項であるということを言っています。また現在のリテールメディアは未だ初期段階にあり、成長痛があるとも言っています。
彼らが言う成長痛とは、
プラットフォームの複雑さ –オムニチャネル ソリューションのニーズの高まりとともに、小売業者向けの新しいポイントソリューションが登場している。小売業者は、オプションの簡素化とオムニチャネルリテールメディアプログラムを有効化する機能から恩恵を受けるだろう。
断片化された購入の課題 –リテールメディアのウォールドガーデンが急増しているため、バイヤーはさまざまなプラットフォームをナビゲートする際に重い運用コストを支払っているため、小売業者の供給にアクセスするためのより統一された方法を模索している。
マーケットプレイスの非効率性 -一貫したアプローチと標準化が欠如しているため、広告エクスペリエンスが劣悪になることが多く、関連性の低い広告が表示されることで買い物客に影響を及ぼす可能性がある。
これらの課題を今回の提携で解消することを目指していることは間違いないでしょう。平たくいうと、小売業者のクライアントがあり、既にリテールメディアとしてサービスを提供しているが、Microsoft としてはリテールメディアに特化したプロダクト(オンサイトの広告商品や、クローズドループレポーティングなど)が弱く、主にオフサイトプロダクトがメインであったところ、今回の提携によりワンプラットフォームのリテールメディアサービスが提供できるようになります。そして Microsoft のもつ膨大なブランド、バイヤーにワンプラットフォームのリテールメディアを提供できるようになり、それはシンプルな買付、透明性のあるレポーティング、効率性のある広告を提供することを意味します。
Microsoft Curate というキュレーションプロダクト
このプロダクト経由で、小売業者はあらゆる DSP で利用できる厳選された取引で、オンサイトオーディエンスを拡大し、収益化することができます。これは主に代理店が利用している DSP は個々に異なり、DSP に依存しない形でリテールメディアの買付が行われる仕組みと考えられます。Deal IDを経由した取引なのかと推測しますが、これにオーディエンスデータを付与することでキュレーションしたリテールメディア面、オーディエンスをターゲティングした買付が可能になるのだと思います。
Retail Media Creative Studio
最後の締めとしては、やはり AI です。Microsoftといえば ChatGPTからCopilotなど AI に大きく投資している企業の一つですよね。最先端の生成 AI テクノロジーをリテールメディアの広告プラットフォームに統合し、これにより広告主は大規模なキャンペーンを簡単に作成および最適化できるようになります。今後、Criteo のクライアントにもこれを提供していく予定とあります。
本提携のまとめ
まとめると、大きくは Microsoft側はリテールメディアプロダクトの強化、Criteo 側は Microsoft の持つ膨大なブランド(広告主)へのアクセスが軸となり、AI を活用した革新的なリテールメディアサービスをこの提携により目指していくということだと言えます。
一方、興味深いのは Crieto のリリースの最後にある、リリース本文より文章が多いんじゃないかと思ってしまう「将来予想に関する記述の開示」です。
ここにはこの提携についてのいろいろなリスク要因が記述されているのですが、リテールメディアに限らず、現在のインターネット広告全体のリスク的な意味合いにもみえるので、見ておいた方がよいですね。
今回はここまでです。
〆まとめ
いかがでしたか?今回から Poll も用意しましたw
ちょっと長くなりましたが、Criteo と Microsoft のリテールメディア領域での提携について触れてきました。こういう業界を前に推し進めるようなインパクトのある提携はどんどんほしいですよね。まず、オンサイトとデマンドの統合が今年2024年後半からスタートするように書いてあるので、是非目に見えるインパクトが見たいです。
一方で、日本マーケットでどれだけこの取り組みが進められるのか?是非頑張ってほしいとこです。
🖊編集後記
冒頭で触れた通り、5月後半から6月にかけて個人的にいろいろありまして RMO の更新が久々になりました。実は 6 月を以て 9 年以上お世話になった会社を離れることになりました。お待ちいただいていた方々も少なからずいらっしゃるようで、お待たせしまして申し訳ありませんm(_ _)m。ペースは以前ほどではないと思いますが既にリテールメディアの仕組みや概要等は既出の記事でカバーしていると思うので、新しいことや、事例、面白い取り組み、マーケット・トレンドなど随時アップデートしてまいります。
それではまた次回。
今回の記事はいかがでしたか?
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