リテールメディアが MFA と安い広告在庫を活用しているという話 (前編)
少々ネガティブなタイトルですが、リテールメディアがパフォーマンスを維持するために、クオリティーの低い広告在庫を活用しているという指摘があります。今回はその前編です。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
以前、MFA について取り上げた記事を書きましたが、そこでは MFA とは?から、どうして MFA が問題なのか、対処法、そしてリテールメディアとの関係性を書きました。そして最後のリテールメディアとの関連性についてのパートでは、基本的にファーストパーティーデータを活用し、クローズドループレポートでどこに配信されたかがロジック上確認できるため、怪しい MFA サイトへの配信が確認されれば対応できるあたりを触れました。
しかし、もっと深刻な状況がリテールメディアと MFA の関係にはある記事があったので触れていきます。
📣この記事でわかること
アトリビューションゲームの実態
何がそう深刻なのか?
それでは本編スタートです。
MFA については、前回の記事 を参照していただくとして、今回のリテールメディアと MFA について指摘している記事1から、アトリビューション問題によりその信頼性が損なわれ、リテールメディアの主要なセールスポイントであるクローズドループの購入アトリビューションは悪用されがちであり、特に低品質な広告枠への配信を通じてアトリビューションクレジットを不正に獲得することが問題視されているという指摘があります。
アトリビューションゲームの実態
リテールメディアは、当 RMO でお伝えしているとおり、デジタルマーケティングの世界で急速に成長しているセグメントです。オンライン小売業者が自社のプラットフォームと購買データを活用して広告を表示し、ブランドと消費者の間に新たなタッチポイントを生み出しています。しかし、この新しい広告モデルは、アトリビューションという根本的な問題に直面しています。正直、これは決してリテールメディアだけの問題ではないのですが、リテールメディアはクローズドループレポーティングを背景に大きな予算を獲得してきた背景もあり、正確なアトリビューションデータがなければ、広告の効果は正しく評価されず、投資の正当性が損なわれます。
透明性の低い広告枠への配信は、RMNによるアトリビューション操作の一例です。この問題は、消費者に対する不正確な情報提供につながり、最終的には RMN に予算透過しているメーカー、ブランド、代理店の信頼性と消費者の意思決定に悪影響を及ぼします。広告が配信される RMN の質が低いと、その広告を見た消費者の目にはそのブランドも質が低いと映りかねません。
リテールメディアのアトリビューション問題は、特に透明性が欠如している環境で顕著になります。多くの RMN が、広告の配信先やその効果に関する十分な情報を広告主に提供していません。例えば、低品質なサイト、MFA に広告が配信されると、その広告が実際にどれだけの販売促進効果を持っていたかを正確に評価することが困難になります。これは、ブランドにとって重大なリスクを意味し、長期的なブランド価値の損失につながる可能性があります。MFAは広告の過剰な露出やユーザーの誤解を招くようなコンテンツを促進することで、そこに掲載される広告主のブランドにダメージを与え、リテールメディアだけでなく、デジタル広告エコシステム全体の信頼性を低下させかねません。
多くの広告主を怒らせている RMN のアトリビューションは、RMN がオープンウェブ全体に広告を配信しているにもかかわらず、最も基本的な透明性の基準すら無いことです。ページレベルのレポートや標準化された検証手段はありません。
RMN は、安価なネットワークサイトや完全な MFA サイトでオンライン ID をタグ付けし、そのユーザーが 1 週間以内 (典型的なアトリビューションルックバックウィンドウ) に購入した場合、そのRMN はその販売に対してコンバージョンを付与してしまいます。
何がそう深刻なのか?
それは、これが仮説ではないことです。2024 年初めに発表されたレポートの中で、Adalytics は、創設者兼 CEO の Krzysztof Franaszek (クシシュトフ・フラナシェク) 氏が述べたように、Amazon の RMN が MFA サイトに広告を貼り付けていることを発見しました。これらの MFA 広告の配置がすべて消えたとしても、これらの広告は価値を生み出さないため、Amazon での実際の商品販売数は基本的に変化しません。それでも広告主は Amazon Ads により自然な売上への移行を目にすることになるでしょう。これは広告主からは非常に見えづらい事象です。なぜなら、RMN は多くの場合、ウォールドガーデンアプローチを採用しています。これは、ログファイルデータや URL レポートを共有しないことを意味します。これは、実際のオンラインユーザーのアトリビューションを増やすために MFA で広告を配信するという倒錯的なインセンティブが生まれます。
Adalyticsのレポートによると、MFA 広告配信全体では Amazon と Google が主な違反者とのことですが、匿名を条件に AdExchanger の取材に応じた2人のエージェンシーバイヤーによると、ローカルの小売業者や中堅小売業者も、自社の RMN でほぼ同じことを行っているということです。。
一方で、CPG や食料品ブランド、彼らはデータをほとんど、あるいは全く所有しておらず、彼らの顧客は実際に店舗に訪れる顧客であり、物理的な棚スペースに対して大金を支払っています。
RMN は、一般的なパフォーマンスマーケティングプラットフォームのように、透明性を提供したり、成果を実証したりするプレッシャーにはさらされていないないのです。
スーパーマーケットや大型チェーン店で取り扱われるブランドは、売上の一定割合を買い物客のマーケティング予算として小売業者のパートナーに再支出することが契約上義務付けられています。例えば実店舗はクーポンパンフレットにブランドを掲載したり、独自のプロモーション価格を設定したりして、商品の販売促進をしたりします。一種のリベートというか、予算の循環ですね(しかし最近では、ショッパーマーケティングの予算もプログラマティックに移行しつつあります)。
このような売上マージンの循環ともいう慣習による透明性の欠如との大きな違いは、MFA や粗悪なネットワークプレースメントは、実店舗がセールや地元紙のクーポン回覧に商品を掲載する場合とは異なり、一部の人々の目にブランドを傷つける可能性があるということです。
多くのブランドは、プログラマティックメディアに対して独自基準を設けています。しかし、RMN を通じて支出した場合、不満のある顧客がゴミのような MFA サイトに掲載された広告のスクリーンショットを送ってくるまで、そのブランドは事象を具体的に認識できません。RMN はブランドがせっかく獲得したオーガニック顧客を奪っています。
〆まとめ
いかがでしたか?
リテールメディアが MFA の片棒を担いでいる、そして質の低い面を買い付けることでパフォーマンスを曇らせているという内容はショッキングなことです。もちろんこれはリテールメディアに限ったことでなく、デジタル広告エコシステム全体の問題でもあります。ただ、リテールメディアはクローズドループ測定をひとつの大きな差別化として広告主にアピールしている以上、この点で指摘を受けやすいことはうなづけます。後編はこの事象を受けどのようなことが考えられるか触れていきます。
🖊編集後記
ゴルフ好きな廣瀬としては、4 月 2 週目はマスターズウィークの為、普段の週以上にワクワクです。3 年前のマスターズで松山英樹 選手が優勝したときは新潟で夜中から TV にかじりついて歓喜したものです。今年は悪天候もあり全選手が苦戦していますがそれでも優勝者は決まります。 個人的にはブライソン・デシャンボー 選手を応援してますが、如何に?
それではまた次回。
今回の記事はいかがでしたか?
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