日本のリテールメディアはオフサイトを中心に発展していく(オフサイト編 2 )
米国のリテールメディアの動きを鑑みて、日本でのリテールメディア発展の方向性を改めて考えてみます。今回は オフサイト広告について続編です。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
複数回にかけて、ここ数ヶ月の知見から日本でのリテールメディア(もしくはコマースメディア)発展の方向性はやっぱりオフサイト広告にあるのか、という考えになっているので、整理とまとめをしながら考えて見たいと思います。今回は前回のオフサイト広告の続編です。
ちなみに、前回の記事はコチラです。
📣この記事でわかること
米国広告主のリテールメディア戦略
増加するオフサイトへの投資
オフサイト広告が成長している背景
オフサイト広告が成長している 2 つの理由
オフサイト広告は広告主にとってリテールメディア戦略の新たな役割となる
オフサイト広告は、広告主と小売業者の両方に新たな状況とパフォーマンスの機会を提供する
オフサイト広告は潜在顧客を店の前に連れていく
それでは本編スタートです。
米国広告主のリテールメディア戦略
ここ複数回の記事でお伝えしているように、リテールメディアへの広告支出の優先順位 No.1 はオンサイト広告です。次にGoogle Shopping などの有料検索型ショッピング広告、ソーシャルメディアが続きます。そして 4 番目に位置しているのが今回のテーマであるオフサイト広告です。今後取り上げる予定ではありますが、日本でも活発な店内 (In-store)リテールメディアは優先順位が未だ低く、さらにデジタル In-Store リテールメディアは、Co-op marketing (共同マーケティング) よりは高いですが、デジタルを除いた店舗内の販促活動の次となっています。In-store リテールメディアは間違いなく、今後の伸びしろのひとつですがまだまだオンサイト、オフサイト広告を上回るほどの戦略のコアにはなっていません。米国の総リテールメディア広告費に占める割合はまだ 1% 未満ですが、各 RMN が競合他社と差別化する方法を模索する中、In-Store リテールメディアの勢いが増していくのは必然です。
EMARKETER の予測によると、オフサイトリテールメディアに対する米国の広告費は今年 61.5% 増加して 106 億 4,000 万ドルに達すると予想されています。この数字は今後 4 年間で 2 倍以上に増加し、2028 年までに 280 億 5,000 万ドルに達し、RMN の総広告支出の 5 分の 1 以上 (21.8%) を占めることになります。また、Advertiser Perceptions は、2024 年の米国のリテールメディア支出は主にオフサイトのプログラマティック広告によって促進され、 30% 増加すると予想しており、マーケターから 200 億ドル以上を引き出せると予測しています。これは、2023 年の 75 億ドルのオフサイトプログラマティック集計額を 167% 上回る成長です。
増加するオフサイトへの投資
現在、オフサイト広告を有効にしている広告主の半数以上が、今後 12 か月間で支出を増やす計画であることが EMARKTER の調査で判明しています。約 3 分の 1 (34%) はこれらの資金を既存の予算から移す予定で、21% はオフサイトでの取り組みを強化するために新規の追加予算を検討しています。この投資の流入により、米国のリテールメディアのオフサイト広告費は 2024 年に 64.1% 増加し、110 億 4000 万ドルに達すると予想されます。これは 2027 年までに 2 倍以上となり、総額240億2000万ドルとなります。
オフサイトが増加するにつれて、プログラマティックによるアクティベーションの数も増加します。
現在、リテールメディアのプログラマティックキャンペーンを実施している広告主のうち、90% が今後 12 か月間継続する予定。現在アクティベーションを行っていないユーザーのうち、33% が今後 12 か月以内にアクティベーションを開始する予定。
米国のプログラマティックデジタルディスプレイ広告費は 2024 年に 15.9% 増加し、1,573 億 5,000 万ドルに達すると予想されています。プログラマティックデジタルビデオ広告費も増加し、20.9% 増の 939 億 5,000 万ドルに達すると予想。
オフサイト広告が成長している背景
インターネット広告業界が外部の広告活動において小売業者のデータにますます依存していることを強く示唆していると考えられます。サードパーティー Cookie の廃止は、パブリッシャーがパブリッシャーのサイトで小売業者のファーストパーティデータを活用できるようにする、このようなパートナーシップをさらに加速させるでしょう。
オフサイト広告は、商品の在庫状況や消費者の行動インサイトを活用し、ウェブ、コネクテッドTV、ソーシャルメディアで適切なオーディエンスをターゲットにすることが可能です。こうしたデータドリブンな戦略を適用することで、ブランドは広告を微調整しながら複数のチャネルで適切な消費者にリーチし、キャンペーンの成功をクローズドループ測定によって直接測定することができます。
リテールメディア広告費は 2025 年までに、816 億ドルにまで成長すると予測されており、これは米国のデジタル広告市場の約四分の一、23.5%を占めるようになります。この成長は、洗練された広告メカニズムにより広告費が流れるトレンドを示しています。
オフサイト広告が成長している 2 つの理由
最も重要な要素は規模
消費者に大規模にリーチすること、そしてさらに重要なことは、大規模な売上を促進することです次いで広告主のニーズ
オフサイトの成長を促進しているのはリテールメディアへの投資方法をより柔軟に制御したいという広告主の願望があります
最近のリテールメディアの広告費は、柔軟性と透明性、そしてマネージドサービスとセルフサービスなどのオプションを提供するプラットフォーム(ワンプラットフォーム)に移ってきています。そして、広告主のニーズに応えるために、多くの RMN がソーシャル、CTV、オープン ウェブ全体で広告フォーマットを提供し始めています。
オフサイト広告は広告主にとってリテールメディア戦略の新たな役割となる
TripleLift が企画し実施した 2023 年 12 月の調査によると、広告主のほぼ半数 (46%) が、小売業者と提携する際に現在オフサイトリテールメディアを利用していると回答しています1。そのうち 3 分の 2 以上 (68%) が、オフサイトがリテールメディア戦略に必要であることに同意しています。フルファネルキャンペーンの実施を志向する広告主はファネル上部のオフサイトチャネルも模索しています。調査によると、オフサイトの主要なフォーマットには、ディスプレイ (広告主の 36% が使用)、オンラインビデオ (33%)、コネクテッドTV (CTV) (26%) などがあります。ソーシャルメディア広告とGoogle ショッピングサーチなどの有料検索も、人気のオフサイトフォーマットとして挙げられています。
EMARKETER によると、CTV に対する米国のリテールメディア広告支出は 2024 年に急増し、前年比 335.5% 増の 36 億 4000 万ドルに達すると予想されています。リテールメディアの総広告支出に占める割合はわずか 6.1% に過ぎませんが、リテールメディアの CTV 広告に費やされる金額は 2027 年までに 2 倍以上となり、86 億 4,000 万ドルに達すると予想されます。
以前の記事にもありますが、広告主により多くの広告機会を提供するために、一部の RMN はソーシャルプラットフォームと提携して、オフサイトのユーザーをターゲットにしています。たとえば、Amazon は 2023 年にアプリ内ショッピング広告で Meta および Snapchatと提携しています。
オフサイト広告は、広告主と小売業者の両方に新たな状況とパフォーマンスの機会を提供する
リテールメディアがオフサイトに拡大するにつれて、広告主と小売業者はオフサイトの活用を実験しながら模索しています。広告主にとってオフサイトのアクティブ化を検討する際に最も重要な要素はパフォーマンスです。しかし、多くの広告主は、ファネル上部もしくは、ファネル下部のどちらで目標を設定すべきかをまだ決めかねているようです。
ブランドや代理店の 58% は、ファネル上部の目標にはオフサイトの方が良いと回答しているが、34% はファネル下部の目標を満たすためにオフサイトを使用している
広告主がオフサイトでの最適化に対しての最上位の KPI はコンバージョン率 (CVR) であり、現在のオフサイトを活用している 56% が挙げています。その他の上位 KPI には、費用対効果 (ROI ) 54%、クリック率 (CTR) 48%、クリック単価 (CPC) 46%、オンライン売上 45% などがある
これは、実質オフサイト自体がアーリーフェーズであり、マーケター自身もオフサイトに対する知見を含めこれからであり、オフサイトを通じて何を達成するかを実験している段階だと思われます。いずれにしてもフルファネル効果を発揮するために、マーケターはオンサイト広告とオフサイト広告の両方を活用することで、マーケターが達成したいゴールに対してそれぞれを最適化できます。
EMARKETER の調査によると、現在オフサイト広告を提供している小売業者の 71% が、オフサイト広告がリテールメディア戦略の重要な部分であることに同意しています。
一方、小売業者にとってのオフサイト広告の価値は、収益の向上から認知度の向上まで多岐にわたります。
小売業者の 3 分の 2 (67%) は、クライアントにオフサイト広告を提供することの最大の要因として収益の増加を挙げ、 2 番目 (60%) はクライアントのニーズを満たすことであり、次にターゲット ユーザーの拡大 (57%) だった
オフサイトはまた、ブランドと小売業者の双方がより多くの人々にリーチする機会を提供し、小売業者が自社の予算を掘り下げることなく認知度を高める素晴らしい方法となり得る
オフサイト広告は潜在顧客を店の前に連れていく
このような考え方もできます。オンサイト広告はインベントリー(広告在庫)に制限(オウンドメディアの規模に依存)があるので、もし広告主、代理店のマーケターが予算をリテールメディアにアロケーションする際、オンサイトインベントリが少ないリテールメディアは機会損失を起こします。これを補完するためのできることがオフサイト広告です。オフサイト広告はオウンドメディア以外の第三者の広告インベントリーに広告を配信します。前述の通り配信先はオープンインターネット、ソーシャルメディア、コネクテッドTVなど複数のチャネルにわたります。そしてファネル視点では、トップファネルからミドルファネル(検索段階より前段階)に効果的です。このような視点から、リテールメディアにとって、オフサイト広告はオンサイト広告を補完することができると言えると思います。
そのためにはまず、ブランドが小売に対応することが必要です。例えば、商品の在庫があるか、適切な価格が設定されているか、そして最も重要なのは、オーガニック検索で上位にランクインしているかどうかです。最悪なのは、お金をかけて消費者に商品を検索してもらった後、これらの対応が足りなかった為に、最終的に消費者が競合他社に流れてしまうことです。
そして、チャネル間で異なるプレースメントを計画する必要もあります。アトリビューションツールを使って、どの広告やチャネルが必要なパフォーマンスを引き出しているのかを評価します。KPIも見直す必要があるかもしれません。オフサイト広告は、消費者を購買ジャーニーの早い上部ファネルの段階で捉えることができます。検討フェーズ(下部ファネル)では購買まで時間がかかるかもしれませんが、だからといって重要度が下がるという判断があるわけではありません。
そして先程、オフサイトはオンサイトを補完すると書きましたが、オンサイトでコンバージョンに至る消費者はもしかするとロイヤリティユーザー(既に既存ユーザー)かもしれません。これは新規ユーザーでないことを意味します。インクリメタリティの視点からは広告費の用途として不十分かもしれません。こういった視点から、長い販売サイクル(検討段階が長い商品など)や検索の前段階である検討段階で消費者にアプローチすることできるオフサイト広告が総合的に長期的視点から重要な要素を担っていると言えます。
今回はここまでです。
〆まとめ
いかがでしたか?今回から Poll も用意しましたw
ちょっと長くなりましたが、オフサイトの重要性やトレンドについて触れてきました。米国はオンサイトをある程度やりきってからのオフサイト。差別化のためのオフサイト、スケール(リーチやさらなる収益性)を求めてのオフサイトといろいろな文脈がありますが、日本ではオンサイトの在庫が米国よりもさらに限られているので、まずはオフサイトから、というのが日本のリテールメディアビジネスという意味でも、小売業のファーストパーティーデータ活用、収益化という意味でも始めやすいことはわかっていただけたかなーと思いながら書いたのですがいかがでしたでしょうか?そういう意味では既に日本のリテールメディアソリューションベンダーの方達や データビジネスをやってらっしゃる方の、日本の小売業の方々の購買データを取り扱い、アプリなどのインベントリを取りまとめて広告配信したり、ソーシャルメディアで広告配信したりというのはとても make sense なことです。
一方で個人的には、やはりそこにオープンインターネットの在庫を是非含めていきたい、いやそこが業界的に必要なんだ!という思いだったりします。だって、オープンインターネット上でビジネスをしているコンテンツクリエーターの各社は今、既に厳しいビジネス環境に置かれているのに加え、サードパーティーCookie の廃止という踊り場に来ている状況です。これを小売業のファーストパーティーで変えられる、今後のオープンインターネットの大きなバイヤーカテゴリが小売業になる、って未来をキボンヌしています。ひとつの大きな可能性として。オフサイトの活用は日本のリテールメディアビジネスの発展とオープンインターネットの救済のキーなんじゃないかなぁ。
🖊編集後記
ウチの猫(メス)が今月 5 才になりまして、お祝いしていたのですが当の本人はそんなこと気にもすることもなく、我々人間だけが勝手にお祝いの理由を作ってお祝いしていました。何も気にせず、日々を送ってくれている姿を見るだけでこちらは癒やされたり、助けられたり、元気づけられたりするので、本人は気にしなくてもこれからもお祝いさせていただきたいですw
それではまた次回。
今回の記事はいかがでしたか?
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