リテールメディアの筆頭はいうまでもなくAmazonやWalmartです。これらに代表されるようにリテールメディアの起源は米国にあります。
ではいつごろからリテールメディアが発生してきたのでしょうか?
個人的に調べた範囲内になりますが、2007年、2008年頃 ”Triad” (Triad Retail Mediaは2016年にWPP GroupM傘下のXaxisに買収されています) という広告会社がWalmart傘下の “Sam’s Club” の広告販売とプロモーションをしたのが最初のようです。1
その後、TriadはWalmart関連の広告販売を順調に増やし、ウォルマート・エクスチェンジ(Walmart Exchange)の構築に大きく寄与します。この成功を基に大手ドラッグストアのCVS, 百貨店大手のKohl's, オフィス用品販売大手のStaplesなどの広告事業を支援し、リテーラーに広告収益をもたらし始めました。
当時のTriadのCEO曰く「我々の戦略は、リテールサイトを閲覧する顧客に、取り扱い商品や店頭プロモーションに関する情報を提供していくというものだ。我々の役割は、消費者、リテーラー、ブランド間の橋渡しを行うことだ」
ほんこれ。日本で言う三方良しの状況を作り出すことがリテールメディア戦略の根幹です。
リテーラー(小売事業者)自身がリテールメディアを始めたというよりは、それをサポートする広告会社がリテールメディアの基盤をつくったといってもいいと思います。
そして個人的に重要だと思うのは、
メディアを買い入れて広告を制作する従来型のエージェンシー事業ではなく、
Triadは、むしろメディア自体を売っており、そのためエージェンシーではなくアドネットワークと見なされている面がある。
というあたりです。いまのリテールメディアネットワークの起源ですね。
日本の場合、前者のメディアを買い入れて(リテール関係のアプリ面など)広告を制作、配信するという従来型のエージェンシー事業に縛られている感があります。なので私はこれをデマンドドリブンなリテールメディアと呼んでいます。
一方で後者のメディア自体を売っているという面は、日本で従来のREPであるCCIさんやDACさんがかつて担っていたところに通じるような気がします。
運用型広告の普及によって彼らの役割やモチベーションはだいぶ変わってしまいましたが、リテールメディアに関しては以前のメディア(この場合ECサイト/アプリ等)を取りまとめて広告主に提案するというメディアを売っていくという動きに回帰することができると面白いなと感じてます。
個人的な話になりますが、以前私はブログやメディアの事業会社に5年ほどいたのですが、まだ純広告が残っている時代でした。CCIさんやDACさんは5,6センチはあろうかというMedia GuideやAd Guideを毎年印刷されていて、クライアントに配っていました。私達弱小メディアはその冊子に乗せてもらえるようREPに営業し、さらに受注いただけるよう広告商品を考えては提案することが営業活動のひとつでした(なかなか会ってもらうのも大変でしたw)。その時DACのある方に我々REPは中小のメディアを取りまとめ、キュレーションしてプランニングすることがメインの役割ですが、その中でメディアを育てていくことが大事な役割のひとつですとおっしゃっていたのを今でも覚えています。なぜかそのセリフが心に残ったんですよね。
その後、私はパブリッシャーサイドを支援するSaaSな会社にいるのですが、REPがメディアを取りまとめる機能を失ったいま、我々のようなパブリッシャーマネタイゼーションを生業とする者がその役割を担うことになるのかもと思ったりしています。
特にこのリテールメディアの領域は、
米国とは異なりミドル〜ロングテールな規模感のECがほとんどだからです。これらの小売事業者の広告在庫をとりまとめ、ブランドと消費者の架け橋になれれば日本でもリテールメディアが盛り上がる機会になるのでは。これがサプライドリブンなリテールメディアではないか?と俯瞰的にはみています。もちろんハードルが多いのですが。。
話がそれましたので、戻しますがTriadのWalmart Exchangeの立ち上げに前後し、
2012年頃AmazonがAmazon Advertising
2014年頃にWalmart Media Group
2016年頃Targetのmedia network
2017年頃にはKroger, BestBuy, Macy’s,
2019年頃、Roundel, Instacart, Albertsons
2021年頃、Walmart Connect, Wag, CVS Media Exchange, Shipt, The Home Depot, Doller Tree, HEBなど
続々とリテーラーがリテールメディアへ参入してきます。
このきっかけを作ったのはいうまでもなくAmazonの存在であり、Walmartなど追従する各社が彼らのビジネスを模倣するような事業展開をみせます。
〆まとめ
リテールメディアの歴史めいたものを紐解いた内容になりましたが、いかがでしたでしょうか。
私はこの成り立ちに興味をもち、
リテーラー🧑🤝🧑ブランド🧑🤝🧑ショッパー(消費者)
が、日本で言う三方良しの関係性が成り立つリテールメディアに可能性を感じています。
そして、この米国流のリテールメディアは、非常にパワフルかつスケーラブルで広告業界に大きなインパクトを与えています。
参照した記事中でXaxisのTriadの買収に際し「TriadはFacebook、Google、Amazonを経由せずに広告在庫を販売することで、急成長中のeコマース業界へのXaxisの参入を助けるだろう」と述べているように、日本はより顕著ですが米国でも広告費の大部分がソーシャルネットワークで消費されている状況にインパクトを与えるものだと言っています。
そして、ブランド(広告主)がリテールメディアに関心を持つのは、人々がどのようなときに製品を購入しようとするのかをリテーラーが知っているからであり、このようなデータは非常に価値が高く、広告主がeコマースでライバルを出し抜くことを可能にすることを、リテーラー自身も認識したことからリテールメディアが始まっています。
ブランドはリテーラーがリテーラーのファーストパーティデータから、ターゲット層、地域、実店舗・オンライン・モバイルでの行動履歴に基づき、広範囲のオーディエンスにリーチすることが可能となるため、リテールメディアの広告需要は今後も増えていく=さらに広告費のシフトが大きくなることを予感させます。
少し気合がはいってしまったのか、最初だからでしょうね、少し長くなってしまいました (2,945文字ぐらい)。これから文章の分量も気にしないとw
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それではまた次回。
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リテーラーを広告媒体に変える、WPP傘下のトライアド
https://digiday.jp/agencies/inside-triad-medias-ambition-in-retail-media/