こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
梅雨明けしまして、本格的な蒸し暑い日本の夏到来ですね。最近はめっきりスコールも多く、熱帯雨林気候な日本ですが。。
さて、
米国のトップリテーラー(大手小売業者)はウォールマートです。下記表はNRF (National Retail Federation) の世界の Top 50 リテーラーランキング 2024 です。
一方、スーパーマーケットで日本のトップリテーラーといえばイオングループになりますよね。日本の小売業ランキングでもセブン&アイホールディングスについで 2 位です。
イオンは世界でも 22 位にランクインしています。
相手が米国最大手スーパーマーケットのウォールマートですので、日本も最大手スーパーマーケットを比較という構図です。
📣この記事でわかること
比較してみること
国を代表するスーパーマーケットの考えている使命
米国と日本のスーパーマーケットのスケール感
リテールメディアの売上インパクト
リテールメディアの成功とは?
ウォールマートとイオンの差
それでは本編スタートです。
比較してみること
基本的に比較したいことはリテールメディアの側面から考えられることです。当然米国のリテールメディアマーケットは最先端であるのに対し、日本のリテールメディアはまさに昨年、今年が元年といわれるぐらいの差があるのでその差が何なのか?を顕在化してその理由や今後どうすれば?というあたりを触れていきます。とはいってもグローバルでも今年 2024 年のカンヌライオンズや NRF などでやっとリテールメディアが主役に躍り出た感がありますが。
それにしても本日(2024年7月16日)の J-Wave の午前中の番組 (Step One)でリテールメディアについて取り上げられてたのにはびっくりこいた。
国を代表するスーパーマーケットの考えている使命
さて、まず各スーパーマーケットの存在意義というか使命(ミッション)を見てみたいと思います。
ウォルマートのミッションステートメントは、
「人々のお金を節約して、より良い生活を送れるようにする」です。
これに対して、
イオンのミッションステートメント(基本理念)は、
「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」
です。ウォールマートはシンプルでわかりやすく、ダイレクトで個人に対して訴えてくる感があります。一方イオンは理念的で会社の存在意義として社会への貢献を目指しています。イオンはスーパーマーケットという業態というよりはもっと大きな企業としての理念を謳ってます、ウォールマートの方がスーパーマーケットという業態をダイレクトに反映している気はしますね。言い換えれば、前者はイオンでなくても通じそうなミッションステートメントですが、ウォールマートの方はウォールマートにしか表現できない雰囲気を感じます。個人的所感ですが。これはこれで面白いスタンスの違いだと思います。
米国と日本のスーパーマーケットのスケール感
まずは、ウォールマート。
設立年: 1962年
本社所在地: アーカンソー州ベントンビル
売上高: 5728億ドル(2022年度)
従業員数: 約230万人
店舗数: 約10,500店舗(全世界)
時価総額: 約4100億ドル(2023年)
イオン(イオングループ)
設立年: 1926年(イオン株式会社としては1989年)
本社所在地: 千葉県千葉市
売上高: 8兆6318億円(2022年度)
従業員数: 約56万人
店舗数: 約21,000店舗(全世界)
時価総額: 約3兆円(2023年)
まとめると、
比較としては、
売上高: ウォールマートの売上高は 5728 億ドル(日本円 157 円計算で約 90 兆円!)で、イオンの売上高は 8 兆 6,318 億円です。為替にも影響されますが現状で、約 10 倍の差。
従業員数: ウォールマートは約 230 万人の従業員を擁し、イオンの約 56 万人と比較して約 4 倍の規模。
店舗数: ウォールマートは約 10,500 店舗、イオンは約 21,000 店舗。イオンの方が店舗数は 2 倍あります。
時価総額: ウォールマートの時価総額は約 4,100 億ドル(157 円計算で、約 64 兆円)、イオンの時価総額は約 3 兆円で、ウォールマートの方が約20倍超とはるかに大きな企業価値を持っています。
リテールメディアの売上インパクト
ウォールマートとイオンの全体の売上と広告売上を見てみましょう。
表がちょっと小さいですが、ウォールマートとイオンの数値をまとめてみました。会計年度の関係でズレがありますがこんな感じです(ウォールマートの会計年度が 1 月末なんですよね)。
両者ともに、売上高は右肩上がりです。2023年と2020年を比較するとウォールマートは116.6%、イオンは111%です。注目したいのはウォールマートのオンライン販売です。 2024 年は 14.2 %がオンライン販売経由の売上になっており、2022 年と比較し、オンライン販売率はほぼ 2 倍、売上高は 2.25 倍の7,065億円 (175 円計算)という規模に達しています。米国のリテールメディアはオンラインで広告配信がベースとなっていますので、オンライン販売が伸びているということは自ずとリテールメディアでの広告売上も伸びるはずですので、このエコシステムが軌道に乗っているとみてよいでしょう。そもそもオンライン販売の売上を切り分けて財務諸表にあげている時点でオンライン販売、リテールメディアへの注力していることの証左です。
一方でイオンの財務諸表からはオンライン販売、広告売上などの項目はまだ無く、そのあたりの動きを把握することは難しいです。このあたりはスタンスの差を感じますね。
ウォールマートのリテールメディアネットワーク (RMN) である、Walmart Connectがローンチされたのは 2021 年度からなのですが、そのタイミングあたりから広告売上が形状されているので、その推移を追うと下記になります。
2021 年 >21 億ドル
2022 年 >27 億ドル
2023 年 >31.9 億ドル
2024 年 > 41 億ドルに達すると想定され
2025 年 > 61.8 億ドルを予想されています
この広告売上が = リテールメディアなのか?という点ですが、Walmart Connect は、ウォールマートの広告ビジネス全体を統括する部門であり、ウォールマートのリテールメディア事業の中心的な役割を果たしています。この部門は、店内広告、デジタル広告、オンライン広告などを通じて広告収益を上げており、オンライン/オフラインを横断し Walmart Connect から生じる売上は = リテールメディアの売上とみて齟齬はなさそうです。
このようにウォールマートの RMN は順調に伸びています。しかし売上シェアはまだ全体のわずかに過ぎません。
仔細になってしまいますが、Pacvueのデータによると、Walmart Connect の第 4 四半期のクリック単価は 67 セント(175円計算で117.25円)で、前年同期比 8 %増、平均支出は前年比 18.47% 増加、クリックスルー率 (CTR) は前年比 55 % 上昇しており、スポンサー付き動画やプラットフォーム上での継続的なアルゴリズムの改善など、新しい広告配置オプションの最適化が効果を上げています。
一方で、イオンの広告売上を財務諸表で確認できるのは、2023 年の 641 億円(175円計算で 3.6億ドル) です。これらが = リテールメディアの売上といえるかは、根拠がみえづらいです。
リテールメディアの成功とは?
日本ではリテールメディア=広告ビジネスという構図を嫌うというか、広告だけじゃないよね、如何に購買データを活用して消費者とのエンゲージメントを図って、消費者に有用な商品やサービスを提供できるか?というような話を聞くことがあるのですが、個人的にはリテールメディアの第一義的な成功指標は広告売上だと思っています。言い切ってしまうと反発もあると思いますが、そもそものリテールメディア発祥の動機が、小売業の利益率の低さ(冒頭のバフェット・コードの日本の小売業ランキングの営業利益をみてください)をカバーする第 2 エンジンとして、大量な購買データという資産を活用した新規ビジネスとして始まったからです。この視点に立つといくら購買データを使って店内ディスプレイを設置して広告を配信するシステムを導入したとしても広告売上が伸びなければ、DX の域のままです。
まさに今回とりあげたウォールマートはこのリテールメディアビジネスの最先端です。オンライン売上を伸ばし、そこにオンサイトの広告買付プラットフォームを準備し、購買データを活用した広告配信を行い、広告商材のバリエーションを増やし、TTD (The Trade Desk) との取り組みを開始しオフサイトへ広告配信面を増やしTikTokなどのソーシャルメディアへの配信をもカバー、さらに今後大きな伸びが期待される CTV (コネクテッドTV) の駆体、OS製造会社をも買収とリテールメディアの進化が止まりません。
ウォールマートとイオンの差
組織・人事の差
こうみてみると、圧倒的にリテールメディアビジネスをドライブさせることに対する本気度(イオンが本気でないという意味ではありません)が違うように思います。投資額もそうですが、何より人事です。経営判断がトップダウンです。ウォールマートのリテールメディア部門である Walmart Connect のトップは、Seth Dallaire です。彼はウォールマートのエグゼクティブバイスプレジデント兼チーフレベニュオフィサー(Chief Revenue Officer)として、Walmart Connect を含む新たな収益事業の成長を加速させる責任を負っています。Seth Dallaire は 2021 年にウォールマートに加入し、以前は Instacart のチーフレベニュオフィサーとして広告ビジネスを立ち上げ、Amazon ではグローバル広告セールスのバイスプレジデントとして活躍していました。
イオンはどうしてもイオングループというグループ形態があるせいか、個々の会社単位でリテールメディアを実施しているようにみえます。イオン本体、Green Beans というネットスーパーを運営するのはイオンネクスト、買収した他のスーパーマーケットチェーンなど、全体規模は当然大きいのですが、サイロ化、フラグメンテーションがあって個々で考えると大きくはありません。また、購買データやユーザーの一元化、及びそのデータの活用範疇の決定、グループ全体で活用できるのか?など客観的に考えてもハードルはたくさん考えられます。
オンライン販売売上の差
リテールメディアの広告売上という意味では、組織や意思決定、IDの一元化も大事ですが、広告配信機会であるインベントリの創出が急務です。ここまでみてきたとおり、ウォールマートのオンライン販売への注力は凄まじく、米国におけるオンライン販売は、25年度第1四半期に22%増加しました。walmart.com は 2024 年 3 月に 3 億 3,850 万人の訪問者を獲得し、e コマースで米国でのマーケットシェアは Amazon についで 2 位の 6.4 %です。ウェブ売上高による北米のオンライン小売業者のランキング、Digital Commerce 360 のトップ 1000で第 2 位です。また、サードパーティの総流通額 (GMV) によるトップ マーケットプレイスのランキング、Digital Commerce 360 のグローバル オンライン マーケットプレイス データベースでも第 9 位です。これだけ強いオンラインストアがあれば、そこに掲出する広告のインパクトも大きくなることは必然です。実店舗と同様にオンラインでも商品棚を持っているわけですから。そして彼らの主力商品は純売上高の 56% を占める食料品部門によるものです。言い換えれば、彼らは今後食料品以外にもチャンスを見出しており、伸びしろです。
オンライン販売が伸びれば、集配サービス、ロジスティクスの整備にも投資が必要になります(いわゆるコストですね)が、彼らはそれらを当然のようにこなし電子商取引のコストは引き続き縮小、特に米国では注文当たりの純配送コストが40%近く改善しています1。
イオンは前述したように、ネットスーパーとう新業態的な形でサービス提供始まって久しいですが、そこに広告をという認識、概念はあり既に取り組みも始まっていますがいかんせん、オンサイト(自社 EC)のトラフィック、集客が小さく、まとまった広告売上をあげるためのインベントリ規模には達していないというのが大まかな状態かと認識しています。なので広告出すより、集客が先だよね。と。
モバイルの差
前述のオンライン販売にもつながるのですが、Webサイトをスマホなどのモバイルデバイス経由で買い物をする、もしくはスマホにダウンロードしているアプリ経由で買い物をするモバイルでのオンライン売上に大きな差があります。
ウォールマートの主戦場の米国では 63.4 %のトラフィックがモバイルデバイス経由です。そしてオンライン販売の 50 %はモバイルデバイスからと 2024 のアーニングレポートで触れられています。このことからモバイル向けの UX の最適化は必須です。
ここで触れずにいられないのはアプリです。
ウォールマートのアプリの累計ダウンロード数は 3億回以上( 1 ヶ月平均で150 - 200万 ダウンロード)、そしてMAU は EC アプリで平均 4位です。
思い切ってウォールマートとイオンのアプリについて見てみましょう。イオンのアプリ、複数あって結局どれが販売に貢献するかという視点で、こちらのアプリをチョイスしましたが、いずれにしても MAU にはっきりでていますが利用率(MAU)が桁違いです。要は日常的に普及していない、使われてないのですよね。
触れてみてもわかりますが、イオンだけでなく日本のスーパーマーケットは EC 化が後手となっており、未だアプリで商品をウェブ同様に購入することができるものは少ないです。逆にクーポンやポイントなどリアル店舗に誘導するための施策の場になっており、利用シーンが全く異なります。これは良い悪いというより事実として受け止めるしかないのですが、本記事冒頭の、リテールメディアの成功という意味ではこのようなモバイルアプリの使われ方(売上を生む場、プロフィットセンターでなく、クーポンやポイントを配布する、コストセンター)から、大きくアップデートが必要な印象です。
また、買い物客の大部分はオンラインではなく実店舗での売上だというのは、ここまで進んでいるウォールマートが認識していることです。上記の表のオンライン売上でも確認できます。なので彼らはどちらも最適化しているのです。実店舗を活かす為のモバイル施策だけではなく、モバイルで売上もあげて、実店舗でも活用される形です。この辺の消費者誘導や消費者へのモバイルの使われ方の設計や思想?などにも差が感じられます。イオンに限ったことでなくこれは日本の小売アプリ全体に言えることですが。
ちなみにウォールマートで一番売れているものはバナナで、年間 15 億ポンド 68 億キログラムも売れてるそうですよ!イオンで 1 番売れてるのはなんでしょう?
今回はここまでです。
〆まとめ
いかがでしたか?今回から Poll も用意しましたw
長くなりましたが、米国と日本の巨大スーパーマーケットをリテールメディア側面から比較してみました。ちょっと比べるもの多すぎて比べきれなかったのが正直なところです。
人口にして米国と日本は約 4 倍の差があるわけですが、このように比較してみると単純に人口差以上のものがありますよね。インターネット広告にここ十数年イノベーションがない、検索、ソーシャル以上のパフォーマンス広告がない。つまらない。逆に著作権や、ターゲティングなどネガティブなフィードバックに事欠かない状況で、業界もひとまわりというかふたまわりしてやっと、リテールメディアというサードウェーブが来ました(テクノロジー的にイノベーションがあるわけではないですが)。日本の場合特にファーストパーティーデータを抱えているところが少ないので、必然的にこれらのデータを生業的にもっている小売業や決済関係の事業者はこのムーブメントに乗るべきだと思います。もちろんウォールマートと同じことは出来ないとは思いますが、学ぶべきことは多そうですし、同じ業界にこのような会社があるのでそういう点からも是非、イオンさんには大きく成功を見たいですし、背中を見せてもらいたいwと勝手に思っています。ホント、米国の小売業者はこぞって RMN 化してますので。
過不足あったかとおもいますが、何かあればコメントなどからご指摘、フィードバックいただけると幸いです。また、ウォールマートについては他の記事でも取り上げてますのでお時間あれば是非。
🖊編集後記
ちょこっと本記事でも触れましたが、FM レイディオの J-Wave でリテールメディアについてとりあげていたんですね。このコーナー自体がスポンサードなのかもわからないのですが、ただリテールメディアどころかインターネット広告自体、説明することも難しいところでリテールメディアについて発信されている事実にうれしいとともに、自分だったらこういうポイントを話すな、とかいろいろ考えちゃいました。もちろん本放送では、そつなくリテールメディアについて語られていました。いずれにしてもこのようなところでもリテールメディアを聞けてよかったです。
それではまた次回。
今回の記事はいかがでしたか?
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