リテールメディアのファーストパーティーデータとは(後編)
リテールメディアの最大の価値は、小売業者が持つ自社データ(ファーストパーティーデータ)であることは言うまでもありません。小売業者のファーストパーティーデータとは具体的に何を指すのでしょうか。後編です。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
前回は、リテールメディアに必要なファーストパーティーデータと付随するサードパーティーデータ、なぜファーストパーティーデータが注目されているのか?入手方法、活用法、そして小売業にとってのファーストパーティーデータついて触れてきました。今回は後編です。
📣この記事でわかること
小売業者のファーストパーティーデータフライホイール
リテールファーストパーティーデータのフライホイールの視点
それでは本編スタートです。
小売業者にとってのファーストパーティーデータの活用法
前編でも紹介しましたが、小売業で得られるファーストパーティーデータの米国の小売業者が実施している活用イメージになります。リテールメディアを活用するファーストパーティーデータの循環を表しています。
まず、顧客エンゲージメントを強化し、貴重なデータを生み出す洗練されたロイヤルティプログラムを開発して精度の高い顧客データを収集する。
このデータを使用してコンテンツを増やし、コミュニケーション、オファーをカスタマイズし、関連性の高い魅力的なエクスペリエンスを顧客に提供(パーソナライゼーション)してオウンドメディアへのトラフィックを増やします。同時に、取引メーカーとのパートナーシップ (JBP) を活用してセールスを強化します。
高精度の顧客データから得られるインサイトを活用してターゲットを絞った広告の機会を提供し、それによって新たな収益源を創出しメーカーからの広告予算を獲得する(リテールメディア)。
リテールメディアから得られる豊富なデータを実用的なレポートに変換し、ビジネス成長のための新たな機会を創出する(データとレポートの収益化)。
こう見てみると、リテールメディアはファーストパーティーデータ活用の一つの手段であることがわかります。
リテールメディアの概念は、広告ビジネスを第 1 エンジンである小売事業に次ぐ第 2 エンジンとすることです。
そのためには、広告主となるメーカー、ブランドとのパートナーシップの強化、広告出稿に対する ROI の向上が「データとレポートの収益化」にあたり、「リテールメディア (RMN) 」はそのためのプラットフォームです。RMN を成功させるためには、オウンドメディアのトラフィックを増やし、そのために「パーソナライゼーション」を強化する必要があります。精度の高いパーソナライゼーションを実施するには高品質なデータが必要となり、その手段として「ロイヤリティプログラム」を活用しています。このようにサイクル化することでファーストパーティーデータの強化、差別化が進んでいきます。
リテールファーストパーティーデータのフライホイールの視点
ここからは上述のリテールファーストパーティーデータフライホイールの流れに乗せながら、小売業者がどのようにファーストパーティーデータを取得し、小売ビジネスに活用しているのか、いくべきなのかをまとめてみました1。
1) ロイヤリティプログラムの構築
買い物客から連絡先情報を取得するには、ウェビナーへの登録を促したり、特別なオファー、キャンペーンに登録させたりして人口統計などのデモグラデータ、興味、好みを収集したりするなど、さまざまな方法があります。
ロイヤルティプログラムを成功させる鍵は、適応し進化する能力です。これはプログラムのパフォーマンスを定期的に分析し、ファーストパーティデータを活用して少しづつ改善していくことです。継続的な改善とパーソナライゼーションのために、プログラム内にフィードバックループを組み込むことも全体的なカスタマーエクスペリエンスの向上に役立ちます。前述のファーストパーティーデータフライホイールの中で、ロイヤリティプログラムを
ロイヤルティプログラムを構築するときは、プログラムの有効性とビジネス目標との整合性を確保するために、これらの質問に対する答えを必ず用意して臨みましょう。
顧客行動のどのような変化がビジネスの成功に大きな影響を与える可能性があるか?
顧客とビジネスの両方に等しく利益をもたらすプログラムをどのように設計できるか?
自社単独でロイヤリティプログラムを実施すべきか?
それともパートナーネットワークとのコラボレーションの方が有益か?プログラムに付加価値を与え、自社のブランドと相性のよいパートナー候補は誰か?
パーソナライズされたプログラムを異なる顧客セグメントに効果的に合わせるにはどうすればよいか?
パーソナライゼーションはどのような方法で、より正確で、コスト効率の高い報酬につながり、プログラムの収益性を確保できるか?
あらゆる対話ポイントで顧客の継続的な関心とエンゲージメントをどのように維持するか?
参加を促進するために、クーポン、会員割引、限定セールなどのカスタマイズされた特典をどのように活用するか?
ロイヤルティプログラムがブランドのアイデンティティを反映した特徴的なカスタマーエクスペリエンスを提供できるようにするにはどうすればよいか?
ロイヤルティプラットフォーム (ロイヤルティの管理、オファーの配布、サービスのホスティングなど) に必要な要素は何か?
プログラム管理を簡素化し、カスタマーエクスペリエンスを向上させるためにテクノロジーをどのように使用するか?
ロイヤルティプログラムを通じて収集した顧客データをどのように保護するのか?
ロイヤルティプログラムの成功をどのように測定するか?
2) 買い物客とのパーソナライゼーションの取り組みを強化する
ファーストパーティーデータの活用は、自社の商品もしくは取り扱う商品を押し付けることよりも顧客のニーズや好みを満たすことの重要性が増し、顧客との関わり方を根本的に変えるものとなっています。そのコアとなるのがデジタルプラットフォームにおけるユーザーエクスペリエンスの向上です。ユーザーがほしい商品の見つけやすさ、スムーズに購入できるようにするためのナビゲーションの改善、レコメンデーションエンジンの改良、カート離脱率を下げるための工夫など、ECにおけるユーザーエクスペリエンスの改善などの合理化にファーストパーティーデータは活用されています。
同様にパーソナライゼーションも、単に商品やサービスをカスタマイズすることから、個人の趣味・嗜好に応えることへ進化し、ターゲットを絞った広告、プロモーションも含まれ自社ブランドに関心を持ちやすい特定の消費者にリーチすることができるようになっています。パーソナライズされたマーケティングメッセージはターゲットユーザーと深くつながるように作成され、コンバージョン率の向上につながる可能性があります。たとえば、顧客セグメントが持続可能な商品を好むことがデータで示されている場合、マーケティングコンテンツはこれらの商品を紹介するように調整され、その結果、それらの買い物客にとってより適切で魅力的なエクスペリエンスが提供されます。この方法により、メーカーやブランドはマーケティング予算を最大限に活用できます。
以下の質問に対する答えを準備しておくことで、パーソナライゼーションの強化に取り組むことができます。
パーソナライゼーションを通じて何を達成したいのか?
また、パーソナライゼーションは幅広いビジネス目標をどのようにサポートするのか?パーソナライゼーションの成功を測る効果的な重要業績評価指標 (KPI) は何ですか?
ロイヤリティ・プログラムの中で、パーソナライゼーションの初期段階としてどこに重点を置くべきか?
企業目標を達成するために顧客エクスペリエンスをパーソナライズするためのシンプルかつ効果的な方法にはどのようなものがあるか?
これらのアプローチは、選択した顧客セグメントの好みや行動とどの程度マッチしているか?
パーソナライズされた体験を提供するために、具体的にどのようなロイヤリティデータを活用できるのか、またそのデータの信頼性は?
顧客エンゲージメントや購買行動の変化を追跡するのに役立つツールや手段は何か?
パーソナライゼーション戦略を継続的にモニタリング、分析、改良するにはどうすればよいか?
3) 収益を向上させるためのリテールメディアのアプローチの視点
ここが RMO 的な本題となるのですが、企業はこれまで以上に、あらゆる顧客とのやり取りにおいて自社データの活用を拡大し、新たな収益源を生み出すことを優先する必要があります。これらの目標を達成するための効果的なアプローチの 1 つが顧客についてより深い洞察を得て、よりパーソナライズされたエクスペリエンスを提供するための、リテールメディア ネットワーク (RMN) の立ち上げを検討することです。
リテールメディアの可能性を最大限に活用するには、リテールメディアに重点を置いた専任チームとともに、さまざまなメディア製品を構築する必要があります。このアプローチにより、リーチ、視聴者の参加、データの正確性、およびメディア支出 (CPM) の費用対効果が向上します。
以下の質問はリテールメディアを活用した収益強化の為に必要なものです。
リテールメディアビジネスの目標規模と範囲は?
当初のターゲット顧客は誰?
リテールメディアキャンペーンではどの商品カテゴリに重点を置くのか?成功の可能性が最も高いのは、どのチャネルか?
分析やクリエイティブコンテンツなどの付加価値サービスを提供できるか?
どのようなファーストパーティデータがあり、どのようにアクセスして利用できるか?
追加の外部データソースを統合する必要があるか?自社データの品質はどれくらいですか?
また、リテールメディアはそのデータにどの程度アクセスできるか?自社のデータにギャップはあるか?
より包括的なアプローチのためにどの外部データソースを統合する必要があるか?リテールメディアと他の事業部門との間の利害の対立にどのように対処する予定か?
リテールメディアチームにとって重要な役割は何か?
また適切な人材はいるか?リテールメディアチームと他のチームの間で調整をどのように成功させるか?
リテールメディアビジネスを構築するための戦略において最も重要なステップは何か?
成功をどのように評価し、時間の経過とともに戦略を変更できるか?
〆まとめ
いかがでしたか?
こうみてくると、リテールメディアやリテールメディアネットワーク (RMN) という単語だけがひとり歩きしているような気がしてきました。小売業者は従来からファーストパーティーデータを使って、自社の商品開発・改善のため、購入する消費者とのエンゲージメントの向上、ニーズの把握、商品の購入をスムーズにするためのユーザーエクスペリエンスの改善を進めてきました。これはどちらかというと内部的な施策で社内の有効性や効率を向上する為の施策でした。
リテールメディアはファーストパーティーデータを収益化につなげるための施策で、どちらかというと社外的な施策で、外部ビジネスの可能性を拡げるものです。自社の RMN を立ち上げ、ファーストパーティーデータを使ったパーソナライゼーションされた広告をメーカーやブランドのキャンペーンを実施することにより認知、購買の促進がなされ、その過程でメーカーやブランドとのパートナーシップが強化されていきます。
リテールメディアはファーストパーティーデータ活用の外部施策の有用なひとつであり、ビジネス面での有用なドライバーのひとつなのだと認識を新たにしました。
🖊編集後記
またゴルフ話になっちゃうのですが、ゴルフの道具ってさほど頻回に買い替えるものではないです(もちろん人によるのですが)。ゴルフは基本的にバッグに 14 本のクラブをいれてラウンドすることができるのですが、14 本のうち 2 本だけ頻回に買い替えを検討するクラブがあります。なんでしょう?
それは、ドライバー ( 1 番飛ばす為のクラブ) と最後にカップにボールを入れるためのパターです。最初と最後に使うクラブなんですよね。なんか面白いです。
それではまた次回。
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