日本のリテールメディアはオフサイトを中心に発展していく(オフサイト編)
米国のリテールメディアの動きを鑑みて、日本でのリテールメディア発展の方向性を改めて考えてみます。今回は オフサイト広告についてです。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
前々回から複数回にかけて、ここ数ヶ月の知見から日本でのリテールメディア(もしくはコマースメディア)発展の方向性はやっぱりオフサイト広告にあるのか、という考えになっているので、整理とまとめをしながら考えて見たいと思います。今回はリテールメディアネットワーク広告構成を見ていきたいと思います。
ちなみに、前々回の記事はコチラと、
前回の記事がコチラ。
📣この記事でわかること
小売業者のリテールメディアにおける真の力
サードパーティー Cookie 問題に対する答え
コネクテッドTV とリテールメディアの融合が次の広告フロンティア
日本のほとんどの小売業者はオフサイトからリテールメディアを開始すべき
それでは本編スタートです。
小売業者のリテールメディアにおける真の力
最初に言ってしまいますが、オフサイトはオンサイトと比較してパフォーマンスは劣ってしまいます。これはチャネル、ファネルなどの構造上、SPL など広告商材上、オンサイトのほうが広告効果が高いからです。故に先日の記事のとおり、現在の米国を含むリテールメディアのトレンドから収益や広告支出の大部分はオンサイト、小売業者のオウンドメディア上にスポンサードプロダクトリスティング、ディスプレイ広告、プロモーションリスティングなどウェブサイト、アプリベースの広告商品で 85% が占められています。また収益性にも差があります。
上記のようにオンサイトの利益率は 70-90% に対し、オフサイトは 20-40% と言われています。とはいっても一般的な利益率と同等もしくはやや上ではあります。
しかし小売業者のリテールメディアにおける真の力は小売業者がもつファーストパーティーデータを他のチャネルと紐づけることです。具体的には、店舗内(In-Store)、オープンインターネット、ソーシャルメディア、CTV(コネクテッドTV) などのサードパーティのプラットフォームです。
サードパーティー Cookie 問題に対する答え
現在我々の周りでは、Google SandBoxや代替 ID、コンテキスト IDなどサードパーティー Cookie 後、いわゆる Post-Cookie の世界を見据え、多数のアイデア、ソリューションを目にすることができます。しかし一番確実にターゲティングする方法はファーストパーティーデータの活用です。そしてリテールメディアのキモというか、根幹にあるのは小売業者のファーストパーティーデータを使用したターゲティング広告です。リテールメディアの初期から参入している多くは既にこれを実践しています。1例えば、米国で有数の百貨店チェーンである Nordstrom(ノードストローム)は、2 年前の NRF 2023 でオフサイトが広告ビジネスの 50% を占めていると共有しています。また、米国ホームセンターチェーンの Lowe’s はYahoo! の DSP との統合を発表し自社のメディアネットワークを通じて広告を配信するブランドのオフサイト配信を可能にしています。Albertson, Walmart など自社でサードパーティーインベントリーを買付することができる機能として DSP と提携するケースは増えています。そしてこの流れは、オープンインターネット、ソーシャルメディア以外にコネクテッドTVの領域に拡大しています。そして、Kroger Precision Marketing の幹部は自社のファーストパーティーデータと標準的に使われているサードパーティーのデータセグメントに対して、オフサイト領域でメディアバイイングを実施した調査をした結果、両者の間で販売実績に 150% の差が見られたと述べています。「リテールメディアの広告費は少し高価であるため、人々は投資をためらうことがあります。しかし、視聴者との関連性がはるかに高いため、2 倍の元が取れることが私たちが証明しているのです。」
また、別の例として J&J(ジョンソンエンドジョンソン)の幹部は、「Target と Pinterest で製品と視聴者が接点をもつことは非常に理にかなっています。なぜなら、Target の消費者はソーシャルの影響を受けることを過剰に評価しているからです」と彼は言いました。 「私たちが Pinterest で直接広告購入を実施し、次に Roundel (Target の RMN) が Pinterest で購入する場合、Target の消費者は私たちにとってはるかに価値があり、効果的であるため、実際に直接 Pintarest から広告を購入するよりも Roundel Pinterest から得られる ROI が高くなります。たとえ(リテールメディアの広告費として)2倍の費用がかかっていたとしてもです。」そして、Google もまた、新しいオフサイト小売メディア ソリューションを2024 年 3 月にローンチし、先の Lowe’s はこの最初のクロースドベータパートナーです。
以前の記事でも紹介した、米国の大手ホームセンター The Home Depot がリニューアルした彼らの RMN である Orange Apron Media ネットワークでは、オフサイト機能も強調されています。新しいプラットフォームはオンサイトとオフサイトのキャンペーンを組み合わせ、ノンエンデミックの広告主の獲得を広く目指しています。また、データクリーンルームも導入され、外部のパブリッシャーが The Home Depot の豊富なデータを使用できるようになりました。
このような事例どれもが、オープンウェブ上でのクローズドループレポーティングによる可視性に支えられています。
コネクテッドTV とリテールメディアの融合が次の広告フロンティア
リテールメディアは、ブランドがお金をどこに使うかだけでなく、キャンペーンの構築方法にも大きな影響を与えています。 「このようなオフサイトの機会をすべて取り入れると、ブランド認知度を高める方法が変わります」と IAB の幹部は言っています。 「以前は、認知度を高めるためにアッパーファネルのビデオやソーシャルキャンペーンを行った後、最後に売上の推移を理解するためにブランドリフト調査や、ある種の MTA (マルチタッチアトリビューション) を行う必要がありました。 今、CTV やソーシャル内のオフサイトのリテールメディアを使えば、文字通りアッパーファネルメディアを実施し、消費者がどのように反応し、ブランドと関わっているかをすぐに理解できるようになります。特に CTV は、独立したチャンネルとして、またリテールメディア業界との統合の可能性の両方で、広告業界で大きな盛り上がりをみせています。この融合をデジタル広告費の「次のフロンティア」と呼ぶ人もいます。
日本のほとんどの小売業者はオフサイトからリテールメディアを開始すべき
前回の記事で触れたように、日本の小売業はほとんどの場合オウンドメディア(オンサイト)が広告在庫として貧弱なため、広告商品として成り立たないことが多いです。このため、日本の小売業者がスタートすべきは、小売業者のファーストパーティデータを使用して、オフサイトつまりオープンインターネットやソーシャル広告などの他のパブリッシャーサイトに広告を掲載し始め、その後小売業者のオウンドメディアにトラフィックを戻すことから意図して始めるべきです。これは、以前、ウエルシア薬局のご担当者がリリース上で発言されていた、「外部からの集客を可能にするオフサイト配信」がまさにホンそれで、トラフィック量がそれほど多くないほとんどの日本の小売業者にとって、リテールメディアを始めるのに最適な方法です。そして、サイト上でより多くのトラフィックを獲得し始めることができると、スポンサードプロダクトリスティング、オンサイトディスプレイなどのオンサイトの各種広告商材が活用できるようになります。これらを意図してオンサイトおよびオフサイトの両輪をワンプラットフォームで回せるようになれば理想的です。
今回はここまでです。次回はオフサイトともオンサイトとも絡んで、店内 (In-Store) リテールメディアについて触れていこうと思います。が、ちと重いな。。
〆まとめ
いかがでしたか?今回から Poll も用意しましたw
日本の場合、オウンドメディアが弱いという事実はスグには変えれられないのですが、これまで培ってきた購買データのファーストパーティーデータは活用できるはずです。一般的に日本のオープンインターネットのパブリッシャーが大規模なファーストパーティーデータを持っているところは限られるのですが、小売業の場合は別です。これらの購買データと消費者を広告主視点で刺さるオーディエンスセグメントを切ることから始まると思います。
🖊編集後記
昨年 12 月に着手して今回で 94 記事目のようです。ちょっと最近体調も含めですが、シゴト周りもイロイロあり、なにより想定通り時間の経過と共に記事のクオリティーを気にするようになってきました。以前はわからないことを調べてそれを記事にしたり、興味のある視点を記事化したりしていましたが、一回りした感があり個人的に不満がでてきました。こんな中で毎日発行することは自分にもなにより、見ていただいている方によろしくないと思い、発刊ペースを落として納得のいく内容にしていきたいと思います。軽い内容、重めの内容どちらも引き続き書き溜めていきますが、たまに毎日読んで頂いている方からお声をかけていただくことあるので、こちらでお伝えできればと思います。引き続きよろしくお願いいたします!
あと、引き続き RMO の GPTs である RetailMedia Mavenも頑張ってくれてますので彼も助けてくれるはずです。てか最近のアップデートでボイスチャット使ったんですがこれヤバないすか?なんか友達みたいに話せるし、英語も教えてくれるし制限さえなければ常に ON にしておきたいぐらいです。
それではまた次回。
今回の記事はいかがでしたか?
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