リテールメディアとショッパブル広告 on TV
海外ではいろいろな視点から、TVという大きな画面を通じてショッピング体験をさせるムーブメントが起こっています。今回は、ショッパブル広告からショッピング TV にかけて触れていきます。
こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
海外ではいろいろな視点から、TVという大きな画面を通じてショッピング体験をさせようという動きがでてきています。TVショッピングというのは海外でも日本でも非常に息の長い販売手法です。ただこれはTV番組というコンテンツとなっているので広告とは切り離して考えると、次に多いのは 15 秒 CM 枠で最終的に電話番号を表示してコールセンターにつなげる、特定のキーワードで検索させる。最近では QR コードでしょうか。今回は、ショッパブル広告(Shoppable Ads)について、そしてそれが TV 画面でどのように機能するのか、そしてショッパブル TV まで追いかけていきたいと思います。
📣この記事でわかること
Shoppable Ads (ショッパブル広告)とは
T コマースと ショッパブル TV
Shoppable TV の台頭
大手メディアの T コマースへの動き
TV 画面でワンクリックで商品を購入するまでの道のり
それでは本編スタートです。
Shoppable Ads (ショッパブル広告)とは
Shoppable Ads はその名の通り、「買い物をすることが可能な広告」です。デジタル広告と e コマースの間に位置し、既に多くの投資が行われ、AI を含め今後の発展が期待されている領域であり、リテールメディア文脈でも今後大きなキーのひとつだと考えられます。Shoppable Ads は既にソーシャル、検索、ストリーミング TV、 プログラマティックそして AR (拡張現実) や VR (仮想現実) などでの活用が始まっています。
Shoppable Ads で大事なことは、広告を踏んだ後、消費者を外に遷移させないことです。これはリテールメディア以前の初期の e コマースプラットフォームが果敢に収益向上の為に広告を導入したもののうまくいかなかった最大の要因のひとつです。当然ですよね。e コマースの第一義的かつ最終的な目的は広告での収益ではなく、そこで販売している商品の売上なのですから。Shoppable Ads は消費者をプラットフォーム(メディア)内に留めてエンゲージメントを高め、決済までを行い、最終的にメディア、広告主双方の収益を向上させる広告です。Shoppable Ads の広告フォーマットは、消費者にとって斬新なショッピング体験と買い物の利便性を提供し、ブランド(広告主)にとっては e コマースでの新しい販売チャネルです。広告を見て外部へ遷移せず商品の購入が完了するプロセス、いわゆるインプレッションからコンバージョンまでのアトリビューションを追うことができます。これはリテールメディア文脈で語られるクローズドループ (CLM) 測定に合致するものです。
一方でこの発展途上な広告には課題ももちろんあります。まず最初に挙がるのが Shoppable Ads に在庫切れの商品が掲載されることです。もちろんこの場合コンバージョンには至らず、広告費が無駄になるだけでなく、消費者の買い物体験が損なわれ、さらにはブランドやそのプラットフォームへの印象も悪くなる可能性があります。また、商品にもよりますが普段遣いの消費財以外の単価の高い商品については、広告だけで購入するにはリスクがあります(商品を吟味して買うということができないという意味)。
とはいえ、ライブコマース、検索、ソーシャルメディア、AR/VR、ストリーミング TV など多方面で目にする機会が増えることは間違いないでしょう。
T コマースと ショッパブル TV
Shoppable Ads から T Commerce(T コマース)に視点を移しましょう。e コマースでなく、T コマースです1。
T コマースはいわゆる TV 番組で電話番号からコールセンターに、TV 画面や出演者が特定のキーワードを伝え、検索させる。最近では TV 画面に QR コードを表示してショッピングサイトなどに遷移させるなど、TV 画面で視聴したコンテンツを起因としたアクションを指します。従来からある手法ですね。
一方、Shoppable TV(ショッパブル TV)は T コマースより狭い範囲を指します。具体的には、Fire TV や Chrome Cast、ゲームコンソールなどのリモコンを使用して TV 画面から直接何かを購入することを指します。
違いは、何かを購入する際、リモコンなどを使って TV 上で買い物を完了できる場合はショッパブル TVであり、リモコン以外のデバイス(例えば、TV で QR コードから遷移して、スマートフォンや PC、または電話)を使って購入に至る、従来のようなショッピング方法は T コマースです。T コマースの方が広い概念で、ショッパブル TV は、TV のみでショッピングを完結できる場合のみに使われます。OTT と CTV の関係性に似ていますね。CTV はあくまでも OTT を視聴する為のデバイスの一つに過ぎないが、OTT は CTV を包括していますが、CTV は OTT ではないです。逆に困惑させてしまったかも。。すべてのショッパブル TV は T コマースですが、すべての T コマースが「ショッパブル TV」というわけではない。問答みたいな感じになってしまったので概念はこのへんにして。
T コマースである従来の TV 画面を使ったショッピング体験と Shoppable TV にはアトリビューションの観点で大きな違いがあります。TV 画面を使ったショッピング体験は、TV から直接何かを購入するわけではないからです。TV である商品について知ったとしても、後で PC やスマートフォン、または電話、もしかすると実店舗で購入する可能性もあります。しかし、直接のクリックするという行為がなければ、世界中のデータサイエンスを駆使しても、特定の広告が特定の購入のきっかけになったかどうかを判断することはできません。QR コードは売上とコンバージョンを特定するのに役立ちますが、まだ完璧なソリューションではありません。場合によっては、後でアクションを起こすつもりで、QR コードをスキャンして製品に関する詳細情報を取得することだってあります。しかし、アトリビューションウィンドウ内でコンバージョンに至らなかった場合、トランザクションの増加には貢献したものの、商品の購入は TV 広告によるものとはみなされません
Shoppable TV の台頭
Roku、NBCUniversal、Disneyなどの大手パブリッシャーは、広告主がテレビ広告に売上を割り当てていくことをサポートする為の方法の 1 つとして、Shoppable TV(ショッパブル TV) を実現しようとしています。この 3 社はいずれも Walmart とさまざまな連携を行っており、Walmart 自体も独自の Shoppable TV を構築しようとしています。以前、本 RMO でも紹介した Vizio の買収が完了した場合でもこれらの取組みは継続することになるでしょう。
一方で、現状の TV コマーシャル上でショッピングすることを可能にする広告技術はまだ開発されておらず、QR コード経由でのショッピング体験が増えている程度なため、TV 広告から直接商品を購入する Shoppable TV が消費者の支持を集められるのかどうかは未知数です。広告主からすれば TV という大画面に従来のような形に加え、ショッピングが完結するこの Shoppable TV は熱望する新チャネルになり得るわけですが、プラットフォーム側と広告主がやや先行しているように見えます。リテールメディアにおける三方良しには消費者がまだついてきていない状態です。
この Shoppable TV は、おそらく消費者の TV 視聴に望むものとは対極にあります。つまり、ラグビーワールドカップを身を乗り出して観ている時に、スニーカーを買ったりする人はいないということです。消費者のショッピングに対する習慣を変えるには、時間とシームレスな技術が必要です。現状有力なのは、リモコンを使用し、あらかじめ保存されたクレジットカードデータの組み合わせなどをシームレスに統合し提供することです。これを実現できるプロバイダーはでてきているので、いずれ QR コードをスキャンしてショッピングを完了するための 2 台目のデバイスが不要になる日は来るとは思いますが、残念ながら今ではありません。
そのため、多くのパブリッシャーは現状 QR コードが Shoppable TV の普及に向けた最初のステップであると考えているようです。
大手メディアの T コマースへの動き
少なくとも現時点では、TV に広告を掲載して売上を伸ばす最大のチャンスは依然として T コマースにあります。具体的には、消費者が実際に買い物をしたい気分になったときに購入を促すことだとでしょう。もちろんそれはドラマに没入している時ではないと思います。たとえば、ディズニーは今年初めの CES の間、Hulu から Disney+ に Shoppable な広告フォーマット(Gateway Shop 広告)を導入しました。この広告フォーマットは、視聴者が広告をクリックして商品に関する詳細情報を、電子メールまたはスマートフォンに送信するよう促します。そうすることで、消費者はその場で商品を購入する必要がなく、情報をブックマークして後で再度アクセスすることができます。この「Save for Later(後で使うために保存)」アプローチにより、Shoppable TV を目指すパブリッシャーの間で多くのイノベーションが起こりそうです。
また、スペイン語のメディアおよびコンテンツ会社であるTelevisaUnivisionは、Shopsense AIと提携して、リニアプラットフォーム(地上波)とストリーミングプラットフォームの両方で番組の一部をショッパブルにしました2。Shopsense テクノロジーは、画面上の QR コードと専用 URL を使用して、視聴者を番組専用のデジタルストアに誘導することで、モバイルデバイス経由で画面上のコンテンツをショッピングできるようにします。このパートナーシップはラテン・アメリカン・ミュージック・アワードで始まり、Univision、UNIMÁS、Galavision、ViXで生放送されます。視聴者の視聴体験全体を向上させ、音楽、スポーツ、その他の重要な瞬間を通じて、視聴者とつながる魅力的な機会を提供するこの機能は、ブランドのリーチを拡大し、消費者とエンゲージするためのより多くのタッチポイントを提供するリテールメディア市場に参入することができます。
TV 画面でワンクリックで商品を購入するまでの道のり
Web やアプリのように、TV でショッパブルなショッピング体験が普及、定着するまでには技術面、習慣面を含め時間がかかります。それでも今 1 番近い場所にいるのは、実際の購買データにアクセスできるメディア、プラットフォームでしょう。
例えば、Amazon は Prime Video 用の広告枠を持っており、Amazon.comでの購入履歴に基づいて消費者にコネクテッド TV 広告をカスタマイズすることができます。これらの広告は関連性が高いだけでなく、Amazonは視聴者がリモコンをクリックして Amazon のカートに簡単に商品を追加できるようにする可能性があります。Prime Video は未だ、TV コマーシャルからの購入を促すために QR コードを使用していますが、その可能性は高いでしょう。以前ご紹介した Walmart と VIZIO にも同様のデータチャンスあります。VIZIO を買収すれば、Walmart は VIZIO のテレビ在庫と自動コンテンツ認識データを管理できるようになります。大手小売業者はこのデータを使って、消費者の購買習慣に基づいて視聴者に自社商品の広告をターゲティングすることができます。
このように大手の小売業者や大手プラットフォーム、TV パブリッシャーは、視聴者がスクリーン上で QR コードをスキャンすることに慣れてくるにつれ、テレビから直接買い物をすることを受け入れるようになることを望んでいます。
実際の消費者は、ここで触れたような「Shoppable TV」や「T コマース」といった用語の定義や、広告主が売上につなげられるかどうかなんて気にしていないでしょうし、新しい技術やスキームがあまりに使いづらく不便だと感じれば、消費者はこのような手段使うことはないと思うので、今後の行方を見守っていきたいと思います。
〆まとめ
いかがでしたか?
今後リテールメディアでも必ず関わってくる、Shoppable Ads, Shoppable TV 周りをご紹介しました。大手メディアやプラットフォームはこれらを自社の広告在庫(オンサイト)として活用しますが、Shoppable Ads などを CTV に配信することができるようになればオフサイト広告の配信に大きな変化が見えてきます。TV 画面上に掲載される広告を見て、2 台目のデバイスを使わず決済までを済ませるためには、いろいろなハードルがまだまだありますが、そういう未来が遠くない気はします。
🖊編集後記
今日、配信が遅れてしまってスミマセン。配信設定ミスと気づくのに遅れてしまったのが体調の問題でした。昨日の午後から耳の具合が悪く、今朝病院にいったところ突発性難聴とのこと。アーティストさんがかかったりするヤツじゃんと思いましたが、まさか自分が突難になってしまうとは。。薬を処方されたので対処していきますが、不安です。次号は GW 明けの 5/7 (火) です。少々お時間空きますが、皆様も楽しい GW を〜👋 廣瀬も英気養ってまいります!
それではまた次回。
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