こんにちは✋廣瀬です。日々順調ですか?
リテールメディアという概念が普及するにつれ、小売業者を主人公とするリテールメディアとは、小売業者のアセットを活用したデータビジネス、メディア(広告)ビジネスであることがわかります。
具体的には自社ECを舞台とするオンサイトとファーストパーティーデータを活用し、自社EC以外の外部サイト、ソーシャルメディア、CTVなどに広告配信するオフサイト、そしてこれに実店舗を舞台にしたインストア・リテールメディアです。
そしてこれら3つをマーケティングファネルを意識して組み合わせることにより、消費者への認知から購買体験に至るまでのカスタマージャーニーをオムニチャネル・リテールメディアでサポートすることができることは先日の記事でご紹介しました。
今回は先日刊行した『1時間でわかるリテールメディア』でも触れている、日本の小売業者がリテールメディアに触れるにあたって、構想上本丸と考えているであろうインストア・リテールメディアについて触れていきます。と考えたらちょっと重めだったので、テーマを設けてそれに沿う内容でお伝えしていこうと思います。
📣この記事でわかること
リテールメディアを行うにあたって、日本のECの現状
ユニークなのはモバイル(アプリ)の活用の仕方
結局のところ小売業者の売上源泉となっているのは実店舗
(改めて)インストア・リテールメディアとは
それでは本編スタートです。
リテールメディアを行うにあたって、日本のECの現状
日本はAmazon, 楽天という2大マーケットプレイスでのEC体験が主流で、ここに小売業者側も依存していることが多いマーケットです(ヤフーショッピングやZOZO TOWNを含めてもいずれもマーケットプレイスモデルなので状況は同じ)。そのため現状日本の小売事業者のオンライン施策はこのようなスパイラルになっています。
各小売業者のオウンドメディアへの集客力は相対的に弱い
↓オンラインでの売り上げ規模は小さい
↓故にそこに広告枠を設置し広告を配信(オンサイト配信)してもスケールのある広告売上にはならない
↓広告主もそのような細かい広告面に広告を配信する手間をかけることは容易でない
↓オンサイト売上はほぼ成り立たない
※オンサイト=オンサイト・リテールメディア=小売業者のEC上の検索、ディスプレイ広告を指す
これは海外でオンサイトリテール・メディアに次ぐ投資対象として伸びている、小売事業者のファーストパーティーデータを活用して、DSPなどを利用し小売事業者のオウンドメディア外の他社サイトへの配信やソーシャルメディア、CTVなどをへ配信するオフサイト配信にも同じことが言えます。
(オンラインへの集客が大きくないため)各小売業者のオンラインでの購買データ)が少ない
↓オフサイト配信に使えるファーストパーティーデータボリュームが少ない
↓
スケーラブルが必要なオフサイト配信に制限がでる
↓広告主にインパクトのある広告として売りづらい
↓
オフサイト売上につながらない
一部の大手スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなど(例えばイオン、セブンイレブン、ウエルシアなど)が日本のリテールメディアの先陣を切っていますが、米国のようなモデル(オンサイト中心、オフサイトがこれから)ではありません。リテールメディアに取り組んでいる日本の企業の方からよく伺うのは、ファーストパーティーデータが少ないから、広告を受注しても想定以上に広告を配信できないということです。
特にデータを使って配信すると当然ながらターゲティングしていくので配信対象が絞り込まれます。そうするとどうしてもターゲティングの元となるファーストパーティーデータのボリューム、母数に配信量も、しいては売上も依存してしまいます。
ココは今後も大きな課題です。
ただファーストパーティーデータの大小は日本のみならず世界中にあるわけで、じゃあどうしたらいいかを考えていくわけですが、それは今回のテーマではないのでまた別途。
こういった背景から、日本でのオンサイト・オフサイトリテールメディアはなかなかリテールメディアとしてのスケールが難しいわけです(端的に言ってます)。
ユニークなのは、モバイル(アプリ)の活用の仕方
別の視点でもあり、先日リリースした下記の記事にも関連しますが、
アプリの活用のされ方が日米で大きく異なり、リテールメディア観点ではリテールメディアで発生する売上の大きな機会損失と化しているところです。
例えば米国のウォールマートやドラッグストアのCVSなどは日本でもスタンダードなデジタル会員証+クーポン(割引)以外に、「オンライン注文・宅配」「ピックアップ」「モバイル決済」など、ファーストパーティーデータを活用しパーソナライズドされたアプリを通じた購買体験の幅を積極的に拡張し、モバイル上での広告売上が伸びています。いわば米国のアプリは商品の売上だけでなく広告での売上も兼ねるプロフィットセンターですが、会員証やクーポン、ポイントを発行する機能と化している日本の小売業者のアプリはコストセンターであるという事実は非常に大きなコントラストです。
結局のところ小売業者の売上源泉となっているのは実店舗
日本で実店舗を持っている小売業者で、Amazon, 楽天などのマーケットプレイスに出店している、また自社ECも持っている小売業者などバリエーションあると思いますが、どの売上より自社の実店舗での売上がプライオリティになっているところがほとんどだと思います。
なぜなら、通常実店舗を持っている小売業者の全体売上の内、ほとんどの売上が実店舗からの売上だからです。これは日本だけの話ではなく、実店舗をもつ小売業者でリテールメディアネットワーク(RMN)を運営している海外の事業者でも同様の状況です。
例えば米国ウォールマートはECからの売上は 13 %前後(約 550 億円)であり、売上の 87 %は実店舗から来ています(2023年1月期より)。ちなみにウォールマートのRMNである、Walmart Connectはだいたい0.5%ぐらいです。Amazonに次ぐRMNをもつウォールマートでさえ、約 90 %近くが実店舗からの売上です。
このように見てみると、もともとオンサイト・リテールメディア、オフサイト・リテールメディアの素地が薄かった日本というマーケットは、そもそもの売上が一番上っている実店舗を如何にデジタルで底上げするかにフォーカスせざるを得ないという文脈も理解できますし、それが一番合理的であることも理解できます。
今回の記事の最後にあらためて、IABで定義されているインストア・リテールメディアをおさらいして、今回は終わりです。
インストア・リテールメディアとは
「インストア・リテールメディア」とは、その名の通り小売店(リアル店舗)の売場空間や店内設置物など、消費者が店内で買い物をする際に接触する各種の広告・情報発信チャネルを総称したマーケティング手法の一種です。
これには店舗外でのデジタル広告(デジタルサイネージ等)も含まれることもあり店舗内外での消費者の購買体験に寄り添った広告展開を意図しています。インストア・リテールメディアは真新しいものではありません。以前より店内特設コーナーやポスター、POPなどがあり、デジタル領域でもPOSデータの活用や、商品タグ、商品棚の高機能化が進んでおりマーチャンダイジング的に発展してきているのは周知の通りです。異なるのはこれら実店舗で集めたデータを広告を媒介として収益化するという概念が加わることで、インストア・リテールメディアという概念に展開します。
以下にもう少し詳しく解説します。
メディアとしての店舗空間の活用:
店内は消費者が「いままさに買い物をしている」という購買行動の最前線であり、その心理状態はオンライン広告やテレビCMとは異なります。この「購買モード」にある消費者に対して、最適なタイミングで商品情報や関連プロモーションを伝えることで、購買意欲を直接高められます。具体的なリテールメディアの形態:
デジタルサイネージ:店内モニターやタブレット端末、スマートショッピングカート上の画面などで、動的な広告や製品紹介動画を流す。
POP(Point of Purchase)ツール:棚札や特設コーナー、バナー、ポスターといった静的な販促素材。
棚・商品陳列戦略:特定ブランドの棚配置、エンド陳列、アイレベルでの製品配置など、視認性・注目度を高めるための工夫。
レジ横プロモーション:レジ待ちのタイミングを利用して、菓子や雑誌など、衝動買いを誘発しやすい商品を露出する。
データ活用による進化:
デジタル技術の進歩により、消費者動線や店内での滞在時間、購入履歴などのデータを活用することで、よりパーソナライズされた広告や陳列が可能となりました。また、センサーやカメラ、Bluetoothビーコンなどを用いた来店者計測や、顧客IDと紐づけたロイヤリティプログラムとの連動により、より高精度なターゲット広告が実現されています。オンラインとオフラインの融合(OMO):
オンラインショッピングにおけるレコメンド機能やパーソナライゼーションの手法が実店舗にも波及しています。たとえば、モバイルアプリと連動したクーポンや、過去購入履歴に応じて店内で出る広告を変えるなど、オンラインとオフラインを統合した統合的な「顧客体験管理」が可能になっています。
総じて、インストア・リテールメディアは、デジタル技術やデータ活用を背景として、単なる「陳列」から「コミュニケーションメディア」へと変貌を遂げている領域であり、実店舗における消費者との接点を最大化するための戦略的手法としての重要性が増しつづけており、これにデータx店内ディスプレイx最終的な増分売上(iROAS)をクローズドループレポートできるエコシステムができれば一つの完成形に近づきます。まだまだオンラインとオフライン(例えばクーポン発行からのコンバージョンは計測できても、店内サイネージをみて商品の売上をトラックするというのは技術的にもまだ未熟ですし、このあたりがまだまだ伸びしろがあって面白いとも言えます。
今回はここまでです。
〆まとめ
いかがでしたか? Poll も使ってねw
インストア・リテールメディアは面白いですよねぇ、もともとPOSデータなどの蓄積があって、マーチャンダイジング的には既にフル活用されていますしそれに、リテールメディアの要素を追加することで、マーチャンダイジングの用途であったファーストパーティーデータが広告収益に化ける可能性がでてくるわけですから。DOOHも含めデジタルサイネージなどとの直接、関節コンバージョンまで計測できる日が来るんだと思いますし、オンラインとオフラインとの垣根を超えた広告エコシステムの構築が次代の楽しみです。
🖊編集後記
メリクリ♪も過ぎ、もういくつ寝るとお正月♫と師走の日本は忙しいのですが楽しい時期に違いありません。みなさんもこの辺りのタイミングで1年を振り返り、よかったこと、そうでなかったこと、来年の豊富などイメージすることでしょう。私もこの10年で一番変化のあった年になりました。
日本のリテールメディア界隈(界隈って単語が流行語大賞に入ったり、いまいち使い方よーわからんですが)でも大きく業界的な一歩を踏み出した印象のある年だったのではないでしょうか。リーダーシップを取ってくださっている企業もありますし、2025年も大きく発展していくこと間違いないと思います。
それではまた次回。
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